厚生労働省の社会保険の未適用事業所に対する適用促進対策

「厚生労働省の社会保険の未適用事業所に対する適用促進対策」

厚生労働省は、「社会保障審議会年金事業管理部会の資料」を公開し、社会保険の未適用事業所に対する適用促進策の実施状況と今後の強化策を発表しましたのでご案内致します。
1.厚生労働省のこれまでの適用促進対策の取組
2.新規適用事業所のうち未適用事業所の加入指導後の加入状況
3.適用対策の更なる強化策
4.加入しない場合のリスク
5.まとめ

1.厚生労働省のこれまでの取組

社会保険の未適用事業所に対する適用促進については、従来から取り組んでいる課題であり、これまでも
(1)平成14年度から雇用保険適用事業所情報
(2)平成24年度から法人登記簿情報
を活用し、社会保険の適用の可能性がある事業所を把握し加入指導等に取り組んできました。
しかしながら、法人登記簿情報には、休眠法人やペーパーカンパニー等が多数含まれており効率的な適用対策が図れない状況でありました。
平成27年度からは、国税庁の法人事業所の情報の提供を受け、従業員を雇い給与を支払っている事業所の把握が可能となり、これを加入指導に活用することにより、さらなる適用促進の取組を進めております。

2.新規適用事業所のうち未適用事業所の加入指導後の加入状況

下の図表の通り、国税庁の法人事業所の情報の活用後の新規適用事業所のうち未適用事業所の加入指導後の加入率は、平成27年度58.9%、平成28年度63.1%と適用前の平成26年度35.0%を大きく改善しているのが明確です。
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また、上記の対策により、平成27年3月末で社会保険の適用調査対象事業所数(未加入事業所数)が約97万件あったのに対し、平成29年3月末には約50万件に減少し、直近の平成29年9月末には、約43万件と平成27年3月末比半減と大幅に改善している状況です。(なお、加入指導により適用となった事業所のほか、調査によって、①既に適用済みである事業所、②休業等により適用対象外と判明した事業所も存在しています。)

3.適用対策の更なる強化策

厚生労働省は、既存事業所対策に加え、新規事業所対策等を行い適用対策の強化を図る予定です。

(1)新規事業所対策~未適用の事業所が多い業種への対応

①新たに未適用事業所を発生させない取組として、地方自治体等が行う新規営業許可申請時等に社会保険・労働保険の加入状況を確認し、厚生労働省に情報提供を求める。 厚生労働省は、提供された情報を日本年金機構等と共有し、日本年金機構等は当該情報に基づき、加入勧奨を行う。
②今回の実態調査の結果を踏まえて、関係業界に社会保険・労働保険の制度を周知するとともに、加入について要請を実施する。

(2)既存事業所対策

①事業所の従業員規模に応じた加入指導
○適用要件を満たす事業所は、全て適用する事が原則であり、計画的・効果的に適用促進を進めるため、下記を目途に、加入すべき被保険者数が5人以上の事業所から、優先的に加入指導等を実施し、適用を進める。
・被保険者が10人以上の事業所 【約4千件】 : 平成30年9月末
・被保険者が5人以上10人未満の事業所 【約2万件】: 平成31年9月末
・被保険者が5人未満の事業所のうち、事業主1人で事業を営んでいる法人事業所や家族のみで経営されている事業所以外の事業所 【約48万件】:平成31年9月末
※ 加入指導を効率的に行う観点から、平成29年度前半にモデル年金事務所において、専門家を交えて、様々な取組を実施した上で、効果的な取組を集積し、全国展開を図る。
②既存の適用事業所における未適用従業員への対応
○厚生年金保険の被保険者数と雇用保険の被保険者数の乖離が大きい事業所を調査対象事業所に選定することにより、効果的な適用漏れ対策に取り組む。

(3)国保との連携

市町村国民健康保険窓口との連携
○市町村国民健康保険担当課は、社会保険に関するリーフレットを設置し、国民健康保険の加入手続 を行う者等が自ら社会保険の加入要件等を確認し、必要に応じ、年金事務所に相談できるようにする。(平成29年4月より実施)
○市町村の実情に応じて、国民健康保険の加入手続時や保険料の納付相談時等にチェックリストによる就労状況の確認を行い、社会保険の加入要件に該当する可能性がある場合に年金事務所に確認 申立を回付する等の取組をモデル的に実施。(平成29年度前半に実施)

4.加入しない場合のリスク

(1)年金事務所の調査により未加入が発覚した会社には、該当者全員の社会保険料を2年間に遡って追徴されます。
通常、社会保険は、会社負担が半分ですが、従業員がすでに会社を辞めており、何らかの理由で社会保険事務所と連絡がつかない場合は、会社が追徴金を肩代わり負担しなければいけないこともあります。
(2)罰則は正当な理由が無く、下記の要件のいずれかに該当するとき、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金があります。(健康保険法第208条)
①被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者に届出せず、又は虚偽の届出をしたとき
②任意適用事業所取消の認可、被保険者資格の得喪の確認、標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額をいう。)の決定若しくは改定について被保険者又は被保険者であった者に通知しないとき
③保険料納付義務に違反して督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき
④保険料納付義務に違反して保険料を納付せず、健康保険印紙の受払及び現金納付に関する帳簿を備え付けず、その受払等の状況を保険者に報告せず、若しくは虚偽の報告をしたとき
⑤厚生労働大臣又は社会保険庁長官による被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する立入検査等に対して文書その他の物件の提出若しくは提示をせず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは立入検査等を拒み、妨げ、忌避したとき
(3)保険料未納のペナルティとして延滞金があります。
延滞金は本来の納付日に納付しなかった場合、督促状が届きます。
そして督促状の指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、延滞金が発生します。(延滞金の計算方法は、こちらをご覧ください。)

5.まとめ

(1)新規事業所の加入率の増加は、厚生労働省の本気度を示すものです。
(2)今回は、社会保険加入のメリットについて触れませんでしたが、傷病手当金、出産手当金、障害年金、障害手当金、遺族厚生年金、将来受給できる老齢厚生年金などの受給により、従業員を守ると共に優秀な人材の確保の上で、社会保険加入メリットは、大変大きいものがあります。
(3)「社会保険(厚生年金)に加入するように、年金事務所から通知が送られてきた。」という事業者の皆様や新規適用事業所の皆様は、どこよりも相談しやすい社会保険労務士事務所「KKパートナーズ」に是非ご相談ください。

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