経済産業省・中小企業庁は、マンガでわかるミラサポ plusシリーズ「市場調査」編を発表しました。
融資・保証の申し込みや補助金の申請の時に、自社の経営計画を求められることはありませんか。経営計画を考えるときに、一番悩まれるのが売上予測ではないでしょうか。色々悩まれて1年後の売上目標を決めますが、それは「予測値」ですか、それとも「希望値」ですか。
相手に納得してもらう経営計画は、売上目標が「予測値」であるかが重要です。やってみないと分からないと言われる方も多いと思いますが、実は市場調査から「予測値」を説明することができるのです。
では、市場環境を把握するには一体どうしたら良いのでしょうか。
そこで、今回のマンガでわかるシリーズでは、市場環境を把握するための方法、「市場」の具体的な方法についてご説明します。
顧客ニーズを把握する方法
経営計画(事業計画)の策定にあたっては、市場分析は欠かせません。
たとえば、小規模事業者持続化補助金の事業計画書には「顧客ニーズと市場の動向」という項目があります。ものづくり補助金にも「将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)」という項目があります。
補助金申請や融資申込の際の経営計画書(事業計画書)には、客観的な視点からの「実現可能性」が求められます。市場分析は、経営計画に説得力を持たせるために欠かせないものなのです。
ここからは、小規模事業者持続化補助金の事業計画書の項目にもある「顧客ニーズと市場の動向」を想定しながら、市場分析の方法について考えてみましょう。
はじめに「顧客ニーズ」について考えてみましょう。顧客ニーズとは、顧客が自社の「商品やサービスを買う動機・理由」であり、言い換えるならば自社の商品やサービスに対して「顧客がどんな価値を求めているか」ということです。
顧客ニーズを調査する方法としては、以下のような方法が考えられます。
- ⚫︎ アンケート調査
- 最も手軽に行うことができるのが、既存顧客へのアンケート調査です。来店したお客様・商品を購入したお客様に、購入理由、購入頻度、満足度等についてのアンケートを取っていきます。
アンケートの方法としてはアンケート用紙に記載してもらうだけでなく、「Googleフォーム」などの無料サービスを利用するケースも増えてきました。スマートフォンからQRコードでフォームにアクセスしてもらうと、集計・分析もしやすく便利です。
その他、アンケートの取り方として、LINEやTwitterなどのSNSを使う方法があります。たとえば、LINE公式アカウントのリサーチ機能等を使えば、LINEの友だちに簡単なアンケートを取ることができます。
- ⚫︎ インタビュー調査
- 顧客ニーズを把握する方法の一つに、ターゲットに直接話を聞く「インタビュー調査」があります。もちろん一人ひとりにインタビューしても良いのですが、なかなか本音を聞き出しにくいため、何人でグループをつくり、座談会・グループインタビューのスタイルで行うことがよくあります。
この時、コーディネーター(司会進行役)は、話しやすい雰囲気をつくることを心がけ、聞き役に徹します。社内でグループインタビューを行う時は、インタビュー相手と同じ世代で話しやすい従業員の方を起用し、経営者は席を外すようにすると色々な意見を引き出すことができます。
- ⚫︎ インターネット調査
- 一昔前まで、市場調査は多大な費用がかかるものでした。しかし近年、インターネットを利用して、安価なアンケート調査ができるサービスが登場しています。
調査価格や調査方法は会社によって異なりますが、基本的な流れは、①ターゲット人数(サンプル数)を決め、②ターゲットの属性(性別・年齢・地域・興味等)を選び、③アンケートの質問項目を設定します。アンケート結果は、WEBページから見ることができます。調査会社に登録しているモニターを使うので、新市場・潜在顧客のニーズを調査することができます。
価格は、調査会社・サンプル数や質問数によって異なりますが、数万円から調査できるものもあります。ただし、調査を依頼する場合は、調査会社の信頼性・信用度についても確認するようにしてください。
- ⚫︎ 公表された調査データの活用
- 最近では、インターネットを少し検索するだけで、市場調査、顧客ニーズ調査がたくさん見つかるようになりました。
なかには、自社の業種・業界に近い分野の市場調査データもあると思いますが、市場調査データの活用にあたっては、①調査機関の信頼性、②調査サンプルの母数、③調査対象の属性、④調査実施時期も確認するようにしてください。
① 調査機関の信頼性 | 調査機関によっては調査方法に不備があったり、数字の根拠が明確でない可能もあります。信頼性の高い調査機関かどうかを確認してください。 |
---|---|
② 調査サンプル数 | 調査の信頼性は、サンプルの数によっても変わります。あまりに少ないサンプル数では、信頼性が低くなります。調査データのサンプル数が統計的に十分な信頼性があるかも確認しましょう。 |
③ 調査対象の属性 | 調査対象が、自社の想定してるターゲットと合致しているかを確認します。調査の対象属性(年齢・性別・地域等)によっては、参考データとして不適な場合も考えられます。 |
④ 調査実施時期 | 顧客ニーズは、時代・社会の変化とともに変化します。当然ですが、市場調査データはできる限り最新のものを使うようにしましょう。 |
市場規模(商圏規模)の調査方法
自社がターゲットとする市場規模(商圏規模)、今後進出しようとしている分野の市場規模(商圏規模)の調査方法としてはどんなものがあるでしょうか。
最も一般的な方法が「総務省家計消費統計」等を利用する方法です。自社の商品・サービスの世帯(人口)当たりの消費額を、自社の商圏の世帯(人口)数にかけると、おおよその市場規模を算出することができます。
たとえば靴屋さんを例に、市場規模を計算してみます。
総務省家計消費統計で1世帯あたりの年間消費額(履物類)が約12,000円だとします。靴屋さんの商圏の地域の世帯数が10万世帯だとすると、
一世帯当たりの消費12,000円(履物類)×1万世帯=1億2000万円
で市場規模は約1億2000万円となります。また、自社の売上が4,000万円ならば、シェアは約33%と計算できます。
この家計消費統計や地域の人口・世帯数などの調査データは、国の統計ポータルサイト「e-Stat」などから手に入れることができます。
これは、小売店など地域を商圏としている例ですが、観光業などの業種は、地域経済分析システム「RESAS」などを利用することも一つの方法です。
これらは国の統計データなので信頼性も高く、無料で使うことができます。
市場動向・業界動向の調査方法
顧客ニーズ調査のところでも述べましたが、インターネットで検索すると、調査会社や業界団体が市場動向についての情報が出てきます。そのなかから、調査機関(発表機関)の信頼性について確認しながら、市場動向を調査しましょう。
ここでは、市場動向の調査方法の一例を紹介します。
- ⚫︎ J-Net21「市場調査データ」「業種別開業ガイド」
- 市場動向・業界動向を調べる際に、ぜひ参考にしてもらいたいのが、J-Net21の「市場調査データ」と「業種別開業ガイド」です。
J-Net21の「市場調査データ」には、業種・業態別の市場調査データがまとめてあり、消費者の利用動向がわかります。
「業種別開業ガイド」は300以上の業種・職種の開業準備の手引きをまとめたもので、創業者向けのガイドですが、業種・業態別の市場動向の資料としても活用できます。
ただし、一部のデータは情報が古くなっている場合もあります。内容を参考にしながら出典データについて、最新情報・一次情報を確認するようにしてましょう。
- ⚫︎ 上場企業のIR資料の活用
- 市場動向・業界動向の調査資料としておすすめしたいのが、株式上場企業のIR情報です。
自社の業界に関連する企業が上場している場合、決算資料や株主総会の報告書などで、市場データなどをもとにしながら、市場動向・業界動向を分析していることがよくあります。
業界トップ企業のホームページでIR情報等を読んでみると、業界の動向などがつかめるかもしれません。
- ⚫︎ 「業種別審査事典」の活用
- 「業種別審査事典(株式会社きんざい)」は1500業種以上の業種の業界動向などをまとめた書籍です。金融機関やシンクタンク、商工会議所・商工会などで、業界を研究するための資料として活用されています。
高価な専門書なので、小規模企業や個人事業主の方は購入しづらいかもしれません。市町の図書館などに所蔵されていることも多いので、図書館で閲覧して市場調査の参考資料にしても良いと思います。
競合調査の方法
市場動向・業界動向というマクロな市場環境についての調査とともに、もっと身近な市場環境についても調べてみましょう。具体的なライバル店やライバル企業について分析する「競合分析」です。
競合分析は、顧客視点で考えることが大切です。顧客は店を利用する時に、価格や品ぞろえ、サービスを比較します。その結果に基づいて、どこの店を利用するかを決定しています。どの企業も競合分析は重要ですが、小売店・飲食店などの店舗を構えている場合、競合分析は欠かせません。
- ⚫︎ 競合調査のすすめ方
- 競合店について調査は、Googleマップなどで商圏内の同業他社を検索して確認しておきます。ホームページがあれば事前に基本情報を確認しておきます。
比較のために調査項目を決めて調査します。調査のポイントとしては以下のようなことが考えらます。
基本情報 | 住所・営業時間・定休日など |
---|---|
立地 | 交通アクセス、集客力・誘引力のある周辺施設名など |
店舗 | 店頭、入りやすさ、駐車場、売場レイアウト、通路幅、バリアフリー対応 |
商品(サービス) | 価格、品質、品ぞろえ(メニュー)、主力商品など |
接客 | 人員体制、コミュニケーション、身だしなみなど |
客層 | 性別、年齢、来店手段、所得など |
競合調査一度調査したら終わりではありません。定期的に調査して、競合店の状況を確認してください。
市場分析で、事業計画に「客観性と説得力」を。
一般的な市場分析について説明してきましたが、市場分析の目的は、その事業の売上が将来どのようなるかを、客観的なデータをもとに予測することです。とくに、補助金や融資のための事業計画では、その事業の「実現性・成長性」の客観的な根拠として、市場分析が求められます。
しかし、インターネット等で検索した「業界動向」などのマクロ的な市場分析だけでは不十分です。近隣の競合店や競合企業との比較調査、見込顧客へのアンケート調査など、自社で作成した市場調査データを加えるなど、ミクロの視点からの市場分析を行うことで、事業計画に説得力を与えることができます。
マクロ・ミクロの両面から市場分析を行い、客観的で説得力のある事業計画を作成してください。
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