2025年年金制度改革に向けて (全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)<連合>

連合は、2025年年金制度改革に向けて(全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)下記内容を発表しました。

公的年金制度は5年に1度、年金の財政状況を確認し、将来の給付水準の見通しを示す財政検証を実施、その結果や現状などを踏まえ、改正の議論が行われます。今年2024年はその財政検証の年であり、2025年通常国会への法案提出に向けて、現在、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で年金の見直しの議論が行われているところです。

連合は、議論に臨むにあたり、2024年6月20日に第9回中央執行委員会で「公的年金制度の見直しに対する連合の対応について」の中で、「年金部会の検討事項に対する連合の考え方」を確認しました。また、年金部会等で議論が本格化する中で、さらに「働き方などに中立的な社会保険制度に対する連合の考え方」を確立する必要があり、9月に「全被用者への被用者保険の完全適用」と「第3号被保険者制度廃止」という2つの論点で46構成組織・47地方連合会において組織討議を実施。その結果を踏まえて、10月18日に第13回中央執行委員会において、「働き方などに中立的な社会保険制度(全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)に対する連合の考え方」を確認しました(添付資料1・2参照)。それに伴い、6月に確認した「年金部会の検討事項に対する連合の考え方」も修正しております(添付資料3)。

組織討議で寄せられた意見と対応について

 組織討議では、多くの組織から「全被用者への被用者保険の完全適用」と「第3号被保険者制度廃止」に対して肯定する意見が寄せられました(添付資料4)。

出所:【添付資料4】組織討議結果報告より加工

出所:【添付資料4】組織討議結果報告より加工

一方で、第3号被保険者制度廃止までの移行期間を十分に確保すべきとの指摘もあり、5年を「10年程度」にするなどの修正を行っています。
また、第3号被保険者制度については、育児や介護などで働けない人への配慮、就労環境の整備、育児や介護の支援策や環境整備などが必要との指摘もあり、中立的な社会保険制度に対する「考え方」に、「疾病や育児・介護などで働きづらい人や働きたくても働けない人も一定数いることを踏まえ、仕事と治療の両立支援や子ども・子育て支援の充実、在宅介護サービスの充実といった支援策が必要」と追記しています。
全被用者への被用者保険の完全適用では、保険料や事務負担が増える中小企業への支援、労務費を含む価格転嫁が必要といった指摘もありました。そのため、中立的な社会保険制度に対する「考え方」に、「中小企業や個人事業主の負担軽減のための方策を検討し、労務費を含む価格転嫁を推進する」と追記しています。
学生除外要件については、学費などを稼ぐ学生の負担増となり慎重な検討が必要との指摘があり、「考え方」に「学業が本業であることをふまえ」との修正も行っています。
なお、健康保険については、医療保険財政への影響を懸念する意見など複数あったため、健康保険の被扶養のあり方や国民健康保険制度の財政基盤安定の方策については、年金制度と分けて今後検討していく予定です。

第3号被保険者制度について

第3号被保険者制度の廃止については、組織内外で賛否両論の様々なご意見があります。国民年金の被保険者は、自営業や学生などの第1号、会社員や公務員などの第2号、専業主婦などの第3号がありますが、このうち第3号は、第2号の配偶者で原則年収130万円未満などの要件があり、個人としての保険料負担なく、将来基礎年金を受給できます。そのため、単身や共働き世帯と比べ不公平であり、いわゆる「年収の壁」を超えないよう就業調整が行われることで、女性のキャリア形成を阻害しているとの課題が指摘されてきました。

連合は、様々なご意見に留意しつつも、働き方やライフスタイルが多様化する中で、配偶者の働き方などにより第3号被保険者に該当するかが決まる現行制度は、中立的な社会保険制度とはいえないと考えております。
また、制度上の男女差はないものの、現状は第3号被保険者の98%を女性が占めていることから、女性のキャリア形成を阻害し、男女間賃金格差を生む原因の一つとなっており、保険料を負担し、給付を受けるという保険の原則に立ち返る必要があるとも考えております。そのような「考え方」を踏まえ、今回組織討議結果を行った結果、第3号被保険者制度は廃止すべきとの結論に至りました。

 第3号被保険者制度廃止に向けては、制度廃止時点の年金受給者や第3号被保険者の受給権に留意しつつ、段階的に改正する必要があります。
そのため、第一段階では、まず新たに第3号になれない制度とし、次に10年程度の期間を設けて、最初の5年程度で配偶者の所得制限、次の5年程度で子どもを養育する親との要件を設けるなど、経過措置を考えております。
第二段階では、第3号被保険者制度を廃止し、自営業者等の所得捕捉の仕組み、国庫負担割合の引き上げにより、所得比例年金・最低保障年金制度の構築をめざしていく予定です。
なお、①過去に第3号被保険者期間があった受給者の年金は減額しない、②廃止時点で第3号被保険者である人、受給者ではないが過去に第3号被保険者であった期間がある人について、第3号被保険者としての加入期間にかかる将来の基礎年金は減額せず、受給資格期間にも含める、③公的年金制度における次世代育成支援の観点で、育児期間中の社会保険料免除措置を拡大(例:「子が小学校入学までの期間」など)する、④様々な事情により働くことができず無年金となる人、受給資格期間を満たしたとしても低年金の人に対しては、生活手当(仮称)などの加算で対応するなど、廃止にあたっては相当な期間をかけて、想定される影響や課題に配慮した制度を求めていく予定です。

出所:【添付資料2】パワーポイント説明資料

出所:【添付資料2】パワーポイント説明資料

また、被用者保険の適用は、働き方によっては手取り収入の減少になる場合もある一方、将来の年金の受取額が増加するメリットもあることについて、さらなる周知・啓発が必要と考えております。

今後の対応について

今後、連合は、「考え方」を踏まえ、年金部会などを通じて、年金制度の見直しを求めていきます。また、連合アクションとして、構成組織・地方連合会と一体となった世論喚起に取り組むとともに、RENGO ONLINEなどを通じた情報発信も行っていく予定です。
年金部会では、次期制度改正に向けて2巡目の議論を行っており、年末頃に「議論の整理」がとりまとめられる予定です。連合は、その「議論の整理」に今回修正した「考え方」が反映されるよう、年金部会などを通じて意見反映を行っていきます。
第3号被保険者制度廃止については、段階的な対応が必要だと考えており、次期年金制度改正では、「働き方などに中立的な社会保険制度に対する連合の考え方」の「当面の考え方」にもある通り、まずは「議論の整理」に「将来的な廃止を明示する」ことをめざしていきます。

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