厚生労働省は、平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表しました。
この調査は、民営事業 所における障害者の雇用の実態を把握し、今後の障害者の雇用施策の検討や立案に役立てることを目的に、5年ごとに実施しています。今回初めて、発達障害者についても他の障害と同様の調査を行いました。
調査は、常用労働者5人以上を雇用する民営事業所のうち、無作為に抽出した約9,200事業所が対象です。
回収数は、6,181事業所(回収率67.2%)でした。
○ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は82万1,000人。 内訳は、身体障害者が42万3,000人、知的障害者が18万9,000人、精神障害者が20万人、発達障害者が3万9,000人。 ※ 以下注)にあるとおり、平成30年度調査では、重複障害のある者をそれぞれの障害に重複して計上しているため、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の合計と調査対象となった事業所に雇用されている全障害者数は一致しない。 また、平成30年度調査は平成25年度調査と実施方法が異なるため、調査結果をそのまま比較することはできないが、精神障害者の雇用者数が大幅に増加(前回4万8,000人)したことが特徴。 ○ 雇用されている精神障害者のうち、週所定労働時間20時間以上30時間未満の割合は39.7%、20時間未満の割合は13.0%であった。また、正社員の割合は25.5%であった。 ○ 雇用している障害者への事業主の配慮事項としては、知的障害者、精神障害者及び発達障害者において、「短時間勤務等勤務時間の配慮」が最も多かった(知的障害者では57.6%、精神障害者では70.8%、発達障害者では76.8%)。 注)平成30年度調査は、以下の点において平成25年度調査と実施方法が異なるため、平成25年度調査結果とそのまま比較することはできません。 ・ 重複障害の取扱いの変更 平成25年度調査では、重複障害のある者については、いずれかの障害に寄せて(知的障害と他の障害の重複障害のある者は知的障害者とする等)計上していましたが、それぞれの障害について把握する方がより詳細なデータとなり、施策に活かせるため、平成30年度調査では、それぞれの障害に重複して計上し各項目の分析を行っています(例:身体障害と知的障害の重複障害のある者は、身体障害、知的障害それぞれに、精神障害と発達障害の重複障害のある者(うつ病と広汎性発達障害の重複のある者など)は、精神障害、発達障害それぞれに計上して集計)。従って、平成30年度調査では、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の合計と調査対象となった事業所に雇用されている全障害者数は一致しません。 ・ 発達障害者 平成25年度調査では、発達障害者のうち精神障害者保健福祉手帳を所持している者が精神障害者の障害種別として把握されていましたが、精神障害者保健福祉手帳を所持していない発達障害者(精神科医の診断により発達障害を確認している者)は調査の対象に含まれていませんでした。平成30年度調査では、発達障害のみにより精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者は発達障害者の障害種別とするとともに、精神障害者保健福祉手帳を所持していない発達障害者(精神科医の診断により発達障害を確認している者)も調査の対象としています。 |
詳細は、次ページ以降をご参照ください。
1 身体障害者、知的障害者、精神障害者及び発達障害者の雇用状況
障害者の雇用状況については、産業別、事業所規模別の回収結果をもとに復元をした推計値を利用して分析を行った。
(1)障害の種類・程度別の雇用状況
イ 身体障害者
・ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている身体障害者は42万3,000人。
・ 障害の種類別にみると、肢体不自由が42.0%、内部障害が28.1%、聴覚言語障害が11.5%、視覚障害が4.5%となっている。
ロ 知的障害者
・ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている知的障害者は18万9,000人。
・ 障害の程度別にみると、重度が17.5%、重度以外が74.3%となっている。
ハ 精神障害者
・ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている精神障害者は20万人。
・ 精神障害者保健福祉手帳により精神障害者であることを確認している者が91.5%、医師の診断等により確認している者が8.3%となっている。
・ 精神障害者保健福祉手帳の等級をみると、2級が46.9%で最も多くなっている。また、最も多い疾病は「統合失調症」で31.2%となっている。
ニ 発達障害者
・ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている発達障害者は3万9,000人。
・ 精神障害者保健福祉手帳により発達障害者であることを確認している者が68.9%、精神科医の診断により確認している者が4.1%となっている。
・ 精神障害者保健福祉手帳の等級をみると、3級が48.7%で最も多くなっている。また、最も多い疾病は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」で76.0%となっている。
(2)雇用形態
雇用形態をみると、身体障害者は52.5%、知的障害者は19.8%、精神障害者は25.5%、発達障害者は22.7%が正社員となっている。
(3)労働時間(週所定労働時間)
イ 通常(週30時間以上)
身体障害者は79.8%、知的障害者は65.5%、精神障害者は47.2%、発達障害者は59.8%となっている。
ロ 週20時間以上30時間未満
身体障害者は16.4%、知的障害者は31.4%、精神障害者は39.7%、発達障害者は35.1%となっている。
ハ 週20時間未満
身体障害者は3.4%、知的障害者は3.0%、精神障害者は13.0%、発達障害者は5.1%となっている。
(4)職業
職業別にみると、身体障害者は事務的職業が32.7%と最も多く、知的障害者は生産工程の職業が37.8%と最も多く、精神障害者はサービスの職業が30.6%と最も多く、発達障害者は販売の職業が39.1%と最も多くなっている。
(5)賃金
平成30年5月の平均賃金をみると、身体障害者は21万5千円、知的障害者は11万7千円、精神障害者は12万5千円、発達障害者は12万7千円となっている。
(6)勤続年数
平均勤続年数をみると、身体障害者は10年2月、知的障害者は7年5月、精神障害者は3年2月、発達障害者は3年4月となっている。
(注1) 平均勤続年数は、勤続年数の短い新規の雇用者の構成割合が増えると、短くなる。
(注2) 採用後に身体障害者、精神障害者又は発達障害者であることが明らかとなった者の勤続年数は、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳又は精神科医の診断書により企業が把握した年月(ただし、身体障害者、精神障害者又は発達障害者であることを把握した年月が明らかでないときは、手帳等の交付日(診断日))を起点として計算した。
2 障害者雇用に当たっての課題・配慮事項
障害者を雇用する際の課題としては、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者ともに、「会社内に適当な仕事があるか」が最も多くなっている(身体障害者では71.3%、知的障害者では74.4%、精神障害者では70.2%、発達障害者では75.3%)。
また、雇用している障害者への配慮事項としては、身体障害者については、「通院・服薬管理等雇用管理上の配慮」が最も多くなっており(51.9%)、知的障害者、精神障害者及び発達障害者については、「短時間勤務等勤務時間の配慮」が最も多くなっている(知的障害者では57.6%、精神障害者では70.8%、発達障害者では 76.8%)。
3 関係機関に期待する取組み
障害者を雇用する上で関係機関に期待する取組みとしては、身体障害者については、「障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」が最も多くなっており(56.0%)、知的障害者、精神障害者及び発達障害者については、「具体的な労働条件、職務内容、環境整備などが相談できる窓口の設置」が最も多くなっている(知的障害者では46.7%、精神障害者では46.6%、発達障害者では48.6%)。
4 障害者雇用を促進するために必要な施策
障害者雇用を促進するために必要な施策としては、身体障害者については、「雇入れの際の助成制度の充実」が最も多くなっており(58.3%)、知的障害者、精神障害者及び発達障害者については、「外部の支援機関の助言・援助などの支援」が最も多くなっている(知的障害者では62.3%、精神障害者では64.2%、発達障害者では65.8%)。
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