ホワイト企業を目指す本当の理由③

ホワイト企業を目指す本当の理由の第3回目は、前回「働き方改革」で「何をを目指しているのか」でご案内しました「生産性の向上」について説明したいと思います。労働制度改革が外部環境に大きく影響を受けているのに対し、生産性の向上は、事業主にとって内部環境に基づくものであり、各事業主の努力によって結果が大きく変わります。
実は、日本の「失われた20年」とも関係していることですが、日本は、先進国の中でも、生産性が低い国であり、生産性を上げることが、労働制度改革と並んで重要な改革であるからなのです。
また、生産性が上がらない最大の原因は、中小企業の生産性が上がらないことと同義であることに、最も注目して頂きたいと思います。

1.日本の生産性は世界的に見て高いのか

経営者の方は、社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(原題:Japan as Number One: Lessons for America)をご存知の方が多いと思います。
この本には、戦後の日本経済の高度経済成長の要因を分析し、日本的経営を高く評価している内容であり、「21世紀は日本の世紀」と言われたこともあったほどです。
しかし、戦後の驚異的な復興は、日本の生産性が高いからもたらされたものではなかったのです。
実は、「日本人の勤勉さ」こそが、その原動力であり、その勤勉さは、長時間労働に裏付けられたものでした。
下記の左の表をご覧ください。2016年にOECD(経済協力開発機構)が発表した日本の時間当たり労働生産性は46.0ドルであり、順位は、OECD加盟35ヵ国中20位(前年と同じ)でした。
また、驚くべきは、右の表であり主要先進7か国の生産性の順位は、1970年からずっと最下位なのです。
すなわち、「21世紀は日本の時代」と言われていた1979年当時にあってもです。

(出典:2016年 OECDデータ)
日本の社会にすっかり定着した「人口減少社会」という言葉が、専門家以外の間でも広く本格的に用いられるようになったのは、2005年12月に、「2005年国勢調査」の最初の集計結果である速報人口を統計局が公表したころからです。
そして、実際に日本の人口が継続的に減少するようになったのは、2008年からであり、生産人口の減少が、戦後の復興からバブル崩壊まで、常に右肩上がりできた「成功体験」を打ち崩し、その後の「失われた20年」から抜け出せない最大の要因と考えています。
すなわち、長時間労働に裏打ちされた「勝ちパターン」は、もはや通用しなくなったのです。

2.日本の生産性は、なぜ低いのか

ある意味で大変分かりく説明しているので、『日本の生産性は、どうして低すぎるのか』(東洋経済オンライン 平成30年9月23日)を下記に引用します。
D.アトキンソン氏(注)は、銀行窓口に座っている女性行員を例に挙げ、なぜ日本企業の生産性が低いのかを指摘した。「いまや、銀行窓口を通して行われている顧客対応業務の大半は、コンビニエンスストアに設置されているATM(現金自動預け払い機)でも可能になった。なのに、今も大勢の女性行員を窓口に張り付けている。本来なら、彼女たちの優秀な能力を他に活かせるよう、人員を再配置しなければならない。1979年、米国における男性収入に占める女性収入は69%だったが、昨年にかけて83%まで上昇した。一方、日本の場合、1979年の比率が55%だったのが、昨年は56%で、ほとんど変わっていない。つまり、女性の労働力が正当に評価されていない証拠だ」
(注)デービッド・アトキンソン(David Atkinson、1965年 – )はイギリス出身で日本在住の経営者。小西美術工藝社社長。アンダーセン・コンサルティング(アクセンチュアの前身)やソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年頃に渡日。1992年にゴールドマン・サックスに移ってアナリストとして活動し、バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘。ほどなく不良債権問題が顕在化し、その名を高めた。
上記内容を、簡単に要約すると「IT化」「機械化」できるにもかかわらず、サービス業においての生産性が低いのが、日本の生産性を引き下げているというものです。
なお補足しますと、下の表の通り、皆さんが感じているように、製造業に限って言えば、2000年までは、日本の製造業が世界1位の生産性を誇っていましたが、現在は15位と大きく後退した点にも留意する必要があります。

3.生産性を向上するにはどうしたらよいのか

生産性を向上する方法は、一言でいえば、投下した労働力に対し、そのアウトプットが増加することを言います。従って、業種や業態に応じ、生産性を向上する方法は、様々あるわけです。
本日は、経営者の皆様に直接役に立つ、国家戦略を紹介することで、各経営者の事業戦略を検討して頂ければと存じます。
具体的には、経済産業省が、国家戦略として本年6月8日に発表した「生産性向上特別措置法」について、以下にご紹介します。
当該法律では、1.プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設、2.データの共有・連携のためのIoT投資の減税等、3.中小企業の生産性向上のための設備投資の促進について規定しています。

1.法律の趣旨

近年、IoTやビッグデータ、人工知能など、ICT分野における急速な技術革新の進展により、産業構造や国際的な競争条件が著しく変化しています。こうした変化に対応し、世界に先駆けて「生産性革命」を実現させるべく、政府は、昨年12月に「新しい経済政策パッケージ」を取りまとめました。
この中で、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」として、あらゆる政策を総動員することとしていることを受け、生産性向上特別措置法により、我が国産業の生産性を短期間に向上させるために必要な支援措置を講じます。

2.法律の概要

  1. プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設
    参加者や期間を限定すること等により、既存の規制にとらわれることなく新しい技術等の実証を行うことができる環境を整備することで、迅速な実証及び規制改革につながるデータの収集を可能とします。
    なお、事前相談・申請を一元的に受け付ける窓口を、本日、開設いたします。詳しくは、内閣官房に開設された下記のウェブサイトをご覧ください。
  1. データの共有・連携のためのIoT投資の減税等
    データの共有・連携を行う取組を認定する制度を創設し、こうした取組に用いる設備等への投資に対する減税措置等の支援を行います。また、一定のセキュリティの確認を受けたデータ共有事業者が、国や独立行政法人等に対し、データ提供を要請できる手続を創設します。
    関係資料については下記Webサイトをご確認ください。
  1. 中小企業の生産性向上のための設備投資の促進
    中小企業者が、市町村の認定を受けた計画に基づいて先端設備等を導入する際の支援措置を講ずることで、地域の自主性のもとで、生産性向上のための設備投資を加速します。
    関係資料については下記Webサイトをご確認ください。

3.関連資料

政令関係

省令関係

告示関係

関連リンク

4.本日のまとめ

①日本は、高度成長時代(1970年)から製造業を除き、サービス業を主体とする全産業で見ると生産性は低かった。
②日本の戦後の奇跡的な復興をもたらしたのは、長時間労働に裏打ちされており、「日本人の勤勉さ」が美徳とされた時代が長く続いてきたが、本格的な生産人口の減少に伴い、「ブラック企業」が社会問題化するに至った。
③今や「ブラック企業」は、生産人口が減少局面に入った日本においては、持続可能な企業とは言えず、生生き残るために、産性向上と労働制度改革は、もはや避けては通れない道です。
全ての企業が取り組まなければならず、政府も本腰を入れ始めた中で、国策に乗らない手はありません。
社会保険労務士事務所「KKパートナーズ」は、国家が「ホワイト企業」と認定する「ユースエール認定」の取得に向けた社内体制整備のコンサルティグ、採用コンサルティングをはじめました。
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