経済産業省・中小企業庁は、支援機関とともに「商工会議所編」 ~葬儀業界のDX化を推進する「AIシステム」を開発~について、下記内容を発表しました。
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。
今回の「支援機関とともに」では、葬儀の司会を派遣していた企業が、商工会議所の様々なサポートを受け、経営革新計画を策定。ものづくり補助金の活用により、新たな事業として、世界で初めての「AI(人工知能)による葬儀の司会ナレーション原稿の作成システム」の開発・提供を行った事例をご紹介します。
認定支援機関 | 岡山商工会議所(岡山県岡山市北区厚生町3丁目1-15) |
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支援企業 | 株式会社ビアンフェ. |
企業概要 | システム開発、教育・研修、経営コンサルティング、司会業務請負、葬祭プロデュース |
所在地 | 岡山県岡山市北区青江1-16-6 アビタシオンあおえ西棟106号 |
WEBサイト | https://www.bienfait-mc.com/ |
商工会議所の「無料相談」で、自社の課題と強みを整理。
株式会社ビアンフェ.は、冠婚葬祭やイベントへの司会の派遣を主な業務として、2008年に設立された。
同社の経営者であり、司会者の一人でもある岡野裕子社長は「司会業だけでは先細り」と感じていたことから、教育研修事業や葬儀プロデュースなど、新事業にも意欲的に挑戦。しかし売上が思うように伸びず、経営面で行きづまりを感じていた。そんな時、目に留まったのが、岡山商工会議所の「無料経営相談」の記事である。
「当時はまだ商工会議所の会員ではありませんでしたが、会員でなくても無料で相談できると知り、一度アドバイスを受けてみようかなと思いました(岡野社長)」
商工会議所の経営指導員には、いま抱えている課題、これからの事業の構想を率直に話した。経営指導員からの質問に回答しているなかで、「頭の中が整理されて、自社の課題や強みがクリアになった」と岡野社長は振り返る。
そのメリットを感じて、商工会議所に入会。経営指導員や専門家からアドバイスを受けるなかで、自社の強みを活かした企業研修事業の取り組みについて「経営革新計画」の策定を勧められた。
経営革新計画とは、中小企業が新しい事業活動に取り組み、経営の向上を図ることを目的とした中長期的な経営計画書のこと。都道府県等から経営革新計画として承認されると、様々な公的支援の対象となる。
2017年、経営革新計画「説得力のある声をつくる企業研修」の承認を取得。計画策定にあたっては、商工会議所の専門家派遣制度を活用し、専門家のサポートを受けながら、企業研修事業のカリキュラム等の具体的な内容を作成していった。
「企業のニーズに応えるカリキュラム・研修内容等、自分だけではなかなか気づきないことがたくさんありました。第三者の客観的な視点を取り入れることで、説得力のある経営計画が策定できたと思います。(岡野社長)」
このような岡山商工会議所の経営サポートついて、川口公平経営指導員はこう語る。
「商工会議所では非会員の方にも経営相談の門戸を開いています。ぜひ気軽にご利用ください。また、経営者との対話を通じた信頼の醸成、経営者にとっての本質的課題の掘り下げ、経営者の気づき・腹落ち、内発的動機づけが得られる伴走型支援をモットーにさらにきめ細やかなサポートをしています(川口経営指導員)」
葬儀社向けのAIナレーション作成システムの開発
経営革新事業計画に基づいて、企業研修事業を進めていた矢先のこと。平成30年7月豪雨による記憶的な大雨により、全国各地が水災に見舞われた。西日本豪雨である。
岡山市も大きな被害を受け、同社も多くの取引先が被災。売上が急減するなかで、家賃等の固定費を削減する必要に迫られ、事務所を移転して、ダウンサイジングすることとなった。
移転にあたって岡野社長が資料を整理してると、膨大な葬儀ナレーション原稿が見つかった。
「25年にわたり、私が葬儀の司会で使ったナレーション原稿です。これこそが、当社の強みであり、貴重な知的財産だと気がつきました。この財産を活かした新事業にチャレンジしたい。そう思ったのです(岡野社長)」
2020年5月、商工会議所のサポートを受けながら、再び経営革新計画の承認を取得。テーマは、「葬儀社向け司会業務の内製化コンサルティング及びナレーション自動作成システムの構築」である。
ナレーション自動作成システムは、「葬儀司会のナレーション原稿」をAI(人工知能)が自動的に作成するシステムだ。葬儀司会では、普通のイベントとは異なり、いくつもの禁句が存在する。命・死などの直接的な表現は避けながら、美しく厳かな言葉で比喩的に表現していかなくてはならない。宗派によっても使う言葉は変わってくる。このような制約のなかで、約4分間・3000文字程度で、故人の人生を一つの物語として綴っていくことが求められるのだ。
葬儀司会のナレーションは、葬儀社のベテラン社員や外部の司会スタッフが制作することが多いが、遺族に寄りそったナレーションの作成は大変な作業である。同社のノウハウを活かしたAIナレーション作成システムならば、遺族の思いを伝えるナレーション原稿を誰でも作成できる。また、AIが自動学習することで、葬儀社の個性も反映できるのである。
AIナレーション作成システムの開発費用にあたっては、ものづくり補助金を活用。申請にあたっては、商工会議所がサポートした。
世界初のAIシステムを「どう売るか」をアドバイス
2020年12月、葬儀社向けのAIナレーション作成システム「IKIRU」(クラウドサービス)が完成。全国の葬儀社に向けて販売を開始したが、いままでにない世界初のシステムであり、当社は「どうやって売ればいいのか」が課題だった。また葬儀業界は保守的であり、新しいものへの抵抗感が強く、なかなか売りにくい原因の一つである。
岡野社長は、商工会議所のWEB集客セミナー、マーケティングセミナー、ホームページ作成セミナー等に参加。販促の知識について学ぶとともに、専門家派遣制度を活用し、専門家のサポートを受けながら、販売戦略を立てていった。
「WEBセミナーを開催し、まず無料モニターで試していただいてから、有料ユーザーになっていただくという形で販売しています。また葬儀社向けのコンサルティングや研修などのサービスもセットで展開していくことも検討しています(岡野社長)」
葬儀業界は、まだまだ古い体質の業界である。しかし、日本古来の伝統、人と人の縁、一人ひとりの宗教観は大切に守りながらも、これからの時代に向けては、葬儀業界の「DX化」を進めていく必要があると岡野社長は考えている。そのために、AIナレーション作成システム「IKIRU」の改良・高機能化を進めつつ、新たなシステムの開発提供にも取り組んでいるところだ。
「岡野社長は、何かあれば商工会議所に顔を出し、いまの課題やこれからの事業について相談してくれます。私たちとしても、意欲のある経営者は積極的に支援していきたいと考えています。どうしても経営者は一人で課題を抱えがちです。しかし、相談してもらえれば、第三者の視点から良い解決方法が見つかるかもしれません(川口相談員)」
岡野社長のように、商工会議所などの支援機関を徹底的に活用することで、活路が開けるケースもあるのではないかと、川口相談員は言う。
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