経済産業省・中小企業庁は、マンガでわかる「マーケティングの4P」について、下記内容を発表しました。
マーケティングとは、何でしょうか。この問いに答えられる人は、意外に少ないかもしれません。「マーケティング=販売促進活動」ぐらいに考えている人も多いと思います。
マーケティングの定義は様々なものがあり、とても広い概念を含んでいます。しかし誤解を恐れずに言い換えるならば、マーケティングとは商品やサービスが「売れる仕組みをつくること」です。
マーケティング戦略では、自社の商品やサービスがつくられ、顧客に届くまでのプロセスのなかで「売れる仕組み」について考えていきます。
この時のヒントとなる考え方に、「マーケティングの4P」があります。4つの頭文字に「P」がつく、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の視点で、マーケティング戦略について検討していく方法です。
今回のマンガでわかるシリーズでは、この「マーケティングの4P」について、観点にご説明したいと思います。
「4P」の視点から、商品・サービスの「売れる仕組み」をつくる
マーケティングの4Pは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)です。自社から顧客へ商品・サービスを届ける(売れるためには)ためには、この4つの視点・要素が欠かせません。
- Product(商品戦略)
- 顧客に、どんな商品・サービスを売るのかを検討します。商品戦略で大切なのは、顧客ニーズの把握です。自社が売りたい(作りたい)商品ではなく、顧客(市場)が求める商品を見つけることが戦略の中心になります。そのために、顧客から自社のどこが評価されているのか。競合他社との差別化のポイントはどこにあるのかを分析します。
たとえば、オフィス街のラーメン屋さんを例に考えてみます。ラーメン屋さんが、オフィスで働く20代~30代の男性会社員をターゲットに、彼らの嗜好にあわせて、秘伝の醤油タレをふんだんに使った「濃厚醤油ラーメン」を開発しました。これが、商品戦略です。商品戦略は、ターゲットの年代・性別等(20代~30代の男性会社員)、競合他社との差別化ポイント(秘伝の醤油たれ)によって変わります。
また、商品戦略には商品・サービス単体だけでなく、保証・アフターサービス、お店の雰囲気なども含まれます。飲食店ならば「大盛り無料サービス」や「Wi-Fiで雑誌読み放題サービス」なども、商品戦略です。
- Price(価格戦略)
- 顧客にいくらで売るか。商品・サービスの価格を決めるのが価格戦略です。売値については損益分岐点を踏まえた、適正な利益をベースに設定します。競合他社の価格や相場を意識しなくてはなりません。競合他社に対して優位性があれば、お客さまからの需要が高ければ、強気で価格を設定することができます。
また同じような商品・サービスでも、高価格帯と低価格帯では、顧客(客層)が変わります。自社の客層にあわせた価格戦略をとることが大切です。
たとえば、ラーメン屋さんならば、周辺の競合ラーメン店の価格を調査し、競合に対応できるように、自店のラーメンの価格を設定します。ランチ時は、ターゲットの社会人男性の平均的な昼食代等を考えて価格を設定する飲食店もよくあります。
また時間帯割引・季節割引・数量割引などの「割引」も価格戦略の一つです。宿泊業などでは、繁忙期と閑散期や予約の状況など、需要によって価格を弾力的に決める仕組み(ダイナミック・プライシング)をとる事業者も増えてきました。 - Place(流通戦略)
- どこの場所で、どのように売るのかを考えるのが、流通戦略です。店舗販売か、ネット通販か。エンドユーザーに販売するのか、卸を経由して販売するのか。顧客のもとに商品やサービスを届けるための経路について検討します。
流通戦略では顧客層にあわせることが大切です。デパート・専門店の商品と、スーパー・コンビニの商品では、顧客層は明らかに異なってきます。
ラーメン屋さんの例で言うと、店舗での飲食にくわえて、新たに出前(デリバリー)サービスをスタートすることなどが考えられます。
流通戦略の見直し(拡充)は新たな顧客の獲得につながりますが、一方で商品やサービスのコンセプトに合致しない流通戦略をとると、売上減のリスクもあります。 - Promotion(販促戦略)
- どんな良い商品・サービスでも、顧客に認知されなければ、存在しないのも同じです。商品・サービスの存在・特徴・魅力を、どのようにターゲットに周知するかを考えるのが、販促戦略です。主な方法としては、新聞・テレビ・雑誌の広告、ホームページ、SNS、キャンペーン等があります。
ラーメン屋さんの場合ならば、新聞折込チラシの配布、開店キャンペーン(餃子一皿サービス)の実施、割引クーポンの発行などが考えられます。
また最近は、InstagramやLINE等のSNSを販促に活用する飲食店も増えています。販促活動でのWEBの役割は大きくなっています。
「4C」で顧客視点からマーケティングを考える
マーケティングの「4P」は、主に製造業をイメージしたマーケティングの考え方で、売り手の視点・企業の視点が強くなりすぎる傾向があります。このような欠点を補うために、買い手の視点・顧客の視点からマーケティングをとらえ直したのがマーケティングの「4C」、Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)です。
4Cはそれぞれ4Pに対応しており、4Pについて検討する際に、顧客の視点を意識する時に使われます。
4P | 4C | 顧客の視点 |
---|---|---|
Product(商品) | Customer Value (顧客価値) |
商品・サービスは、顧客(市場)が求めているものか、顧客にとって価値のあるものか |
Price(価格) | Cost(コスト) | 顧客にとってのコスト(価格)と商品・サービスの価値が妥当であるか。 |
Place(流通) | Convenience(利便性) | 販売方法・購入する場所は、顧客にとって利便性があるか、買いやすいか。 |
Promotion(販促) | Communication (コミュニケーション) |
一方的な情報発信になっていないか、顧客と双方向コミュニケーションをとる方法はないか。 |
マーケティングは、事業環境の変化にあわせて見直していく。
マーケティングは「売れる仕組みをつくること」と言いましたが、仕組みを一度つくれば終わりではありません。事業環境は刻々と変化します。それにあわせて「売れる仕組み」を見直していくことが必要です。
商品やサービスの売上が伸び悩み、その原因がどこにあるかを見つける時、マーケティングの「4P」で整理すると分かりやすくなります。顧客のニーズに商品がマッチしていないのか、ターゲットにとって価格が高いからなのか、販売する方法や場所が悪いのか、販促不足でターゲットに情報が届いていないのか、4つの視点から考えていきます。「商品」に課題があるのに、いくら「販促」に力を入れても売上は伸びません。また良い「商品」でも「販売場所」を間違えていたら、なかなか売れないはずです。
自社の商品・サービスが顧客に届くまでの一連の流れのなかで課題を見つけ、それを解決し、「売れる仕組み」をつくっていくこと。それが、マーケティングなのです。
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