技術者集団を育成して元請会社へと成長。タレントを活用したマーケティングで新エリアに進出【支援機関とともに「金融機関編」】

経済産業省・中小企業庁は、技術者集団を育成して元請会社へと成長。タレントを活用したマーケティングで新エリアに進出【支援機関とともに「金融機関編」】について、下記内容を発表しました。

「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、商工会・商工会議所、金融機関、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。

今回の「支援機関とともに」では、下請がほとんどだった塗装会社が、技術者集団を育成し、事業分野を広げて総合力を高めることで元請仕事を増やし、タレントを活用したマーケティングで新エリアに進出している事例をご紹介します。

株式会社郡山塗装
認定支援機関 東邦銀行 郡山卸町支店(福島県郡山市喜久田町卸1丁目3-1)
支援企業 株式会社郡山塗装
企業概要 外壁塗装・屋根塗装・リフォーム工事・建造物の総合リニューアル工事
所在地 福島県郡山市喜久田町卸3丁目38-1
ホームページ https://www.k-toso.com/外部リンクはこちら

元請工事を増やし、お客様を喜ばせる仕事がしたい

株式会社郡山塗装は、福島県郡山市を中心に、外壁塗装・屋根塗装・リフォーム工事等を手がけている。創業は昭和3年、100年近い歴史をもつ老舗の塗装会社だ。

佐藤隆社長が入社したのは平成2年、25歳の時である。高専を卒業し、大手精密機器メーカーのエンジニアとして働いていたが、親戚筋だった当時の社長から、郡山塗装の後継者として入社してくれないかと誘われた。

佐藤社長

「迷いましたが、大手企業のサラリーマンとして働くよりも中小企業の方が自分の力が発揮できるし、やりがいが大きいのではないかと思ったのです(佐藤社長)」

だが入社してみると、それほど単純なものではなかった。当時の郡山塗装は、ゼネコン・ハウスメーカー・工務店等からの下請仕事が9割以上。塗装工事の仕様については元請会社に決められており、下請会社に求められるのは、価格対応の部分が大きかった。職人による工事品質は私たちがお客様から評価されることが少なく、直接お客様に付加価値の高い工事を提案することもできなかった。

佐藤社長

「下請けのままでも悪くはないが、どうせやるなら自分たちの名前で仕事をして、お客様に喜んでもらうのはもちろん、社員がやりがいをもって仕事が出来る会社にしたいと思っていました。(佐藤社長)」

平成20年、43歳の若さで社長に就任すると、佐藤社長は「元請ができる組織づくり」を本格的にスタートさせた。

打ち合わせ

技術者集団を育て、総合力を高め、元請仕事を拡大

元請会社としての信頼を得るために、同社は人材育成に力を入れた。

佐藤社長

「塗装等の工事品質は、職人の腕にかかっています。職人のなり手が減少していくなかで、レベルの高い職人を数多く揃えることができれば、それが最大の武器になると考えましたまた、同時に、それを管理する技術者を育成していく重要さも感じていました(佐藤社長)」

同社では、若手人材を積極的に雇用して、ゼロから職人に育て上げていった。これは、佐藤社長自身が全くの別業界から転職し、塗装・建築・土木の資格を取得、建設技術者としてのスキルを磨いてきた経験も大きい。就職ガイダンス等で、「塗装職人・建設技術者には将来性を感じる。スキルを身につければ、その技術で一生食べていける」と社長自らが熱く語り、人材採用に取り組んでいった。

菊地氏

「建設会社のなかには、平均年齢が50歳を越える会社も少なくありません。そのなかで、同社の平均年齢は30台前半。社内は、若々しい活気にあふれています(菊地氏)」

メインバンクである東邦銀行 郡山卸町支店の菊地晴超氏はこう言う。

そして現在、同社の職人は、塗装・防水・仮設・左官など、あわせて、総勢50名を超える陣容を誇るまでになった。ほとんどが20代~30代の若手である。

見識のある技術者集団を強みに、同社は塗装リフォームのショールームを、郡山市・白河市・いわき市・福島市など県下全域に展開。施工品質の高さが評価され、エンドユーザーからの元請仕事が増えていった。

人材育成とともに、事業領域の拡大にも挑戦した。塗装だけでなく建築改修・土木分野にも事業を拡げ、建設業としての総合力を高めることで、自治体・企業からの受注、元請仕事を増していったのである。

菊地氏

「事業拡大にあたって、当行でもM&A情報の提供などのサポートをさせていただきました。またグループ企業が新事業を展開する際には認定支援機関として、事業再構築補助金の活用もサポートしています(菊地氏)」

佐藤社長

「質の高い技術者集団を育て、幅広い業務に対応できる組織をつくったことで、自社の名前で、お客様から直接仕事が受注にできるようになりました(佐藤社長)」

現在、同社の売上の8割以上が元請仕事だと言う。佐藤社長が入社した頃と比べると、下請けと元請の比率は、完全に逆転した。

作業風景

作業風景

有名タレントを活用したマーケティングで、新エリアに進出

令和2年、同社はグループ会社を設立し、栃木県に進出。塗装リフォームのショールームを栃木県内に4店舗展開し、事業の拡大を図ることにしました。

佐藤社長

「塗装リフォーム工事は、職人のスキルで品質が左右されます。施工力に優れた職人集団と、それを管理する技術者を揃える当社ならば、県外でも十分に勝負できると考えました(佐藤社長)」

技術者の質には絶対の自信を持っていたが、課題もあった。福島県内では実績も知名度もあるが、栃木県ではほとんど知られていない。エリア進出を成功させるためには、塗装リフォームのターゲットであるエンドユーザーに社名を知ってもらい、会社のことを信頼してもらう必要がある。

佐藤社長

「知名度を高めたいと考えていた時、中小企業でも有名タレントを活用したマーケティングができるプロジェクトを知りました(佐藤社長)」

このプロジェクトを通じて、DIY番組などで有名なタレントをアンバサダー(宣伝大使)に起用。WEBサイトやチラシのメインビジュアルにすることで、エンドユーザーの知名度と信頼感を短期間で獲得することができた。

佐藤社長

「また若者からの知名度が高いタレントをアンバサダーにすることで、新卒採用の活動にも好影響があるのではないかと期待しています(佐藤社長)」

これから、塗装業・建設業に関わる職人はますます不足していく。職人を含め建設技術者を育てることは自社のためだけでなく、今後インフラ等の維持修繕のニーズが高まる日本社会に貢献するという意味合いもあると佐藤社長は言う。

佐藤社長

「そして職人の中で自信がある者には、独立も応援したい。自分もその立場だったら、起業してチャレンジしてみたいという、その気持ちは分かります。(佐藤社長)」

同社には独立支援制度があり、会社設立などの支援もしている。実際、佐藤社長が就任してから、10人程が独立を果たしているとのことだ。

菊地氏

「人材育成にかける社長の情熱には、いつも感銘を受けています。当行も起業のお手伝いなど、様々な形で支援していきたいと思います(菊地氏)」

支援機関として、補助金活用や、販売促進、採用支援、ビジネスマッチング、M&Aなど、様々な形で、同社の事業拡大をサポートしていきたいと菊地氏は言う。

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