非化石エネルギーの使用割合に関する法改正はどのような内容なのでしょうか。(経済産業省・中小企業庁)

経済産業省・中小企業庁は、非化石エネルギーの使用割合に関する法改正はどのような内容なのでしょうか。と題して。下記内容を発表しました。

法律により、非化石エネルギーの使用割合の目標を設定し、進捗を報告することが義務付けられたと聞きましたが、その内容はどのようなものなのでしょうか。

現在、私が勤務する会社は、中小企業ですがエネルギー使用量が多いため、省エネ法の特定事業者になっています。このたび、省エネ法が改正され、特定事業者は非化石エネルギーの使用割合向上の目標を設定し、その進捗を報告することが義務付けられた、と聞きました。その内容はどのようなものなのでしょうか。

回答

これまで、省エネ法の対象外であった非化石エネルギーが、省エネ法で定める「エネルギー」の定義の中に加えられました。
そして、一定量以上エネルギーを使用する特定事業者は、非化石エネルギー利用割合の向上に関する目標値を決め、目標及び取組事項を記した中長期計画の作成や、非化石エネルギーの利用状況の定期報告等を行うことになりました。
法律の名称も「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改められます。法律の施行は令和5年4月1日ですが、すでに令和4年5月20日に公布されていますので、改正の内容を皆様のカーボンニュートラルへの取組の参考としてください。

1.非化石エネルギーも省エネ法の対象となる

(1) 省エネ法の対象者と義務の内容

省エネ法では、従来から、図1のように、エネルギーを使用する事業者すべての努力義務を定めています。特に、エネルギー使用量が多い特定事業者等は、中長期計画およびエネルギー使用状況等の定期報告が義務づけられています。この特定事業者には中小企業の事業者が多く含まれています。

図1 省エネ法におけるエネルギー使用者への直接規制
図1 省エネ法におけるエネルギー使用者への直接規制   1)より抜粋
(2) これまでの省エネ法におけるエネルギーの定義

これまで省エネ法では、原油、ガソリン、重油、その他石油製品、天然ガス、石炭などの化石燃料およびそれら化石燃料から得られた熱と電気を「エネルギー」とする、と定義されていました。そしてこれらのエネルギーの消費原単位を下げること等が目標とされてきました。
一方、水素、バイオマス燃料などの非化石燃料や、太陽光、風力など自然エネルギー起源の電気などの「非化石エネルギー」は「エネルギー」から除外されていました。

(3) カーボンニュートラルに向け、非化石エネルギーも「エネルギー」と定義

従来の省エネ法のもとで一部の特定事業者は、非化石エネルギーを使用することにより、結果として化石エネルギーの使用量が減り、エネルギー消費原単位を下げることができました。また、非化石エネルギーの使用量についての報告は不要でした。しかし、今後は、非化石エネルギーへの転換を促す積極的な評価が必要となってきます。

カーボンニュートラル実現に向けて、各種事業所などエネルギーの需要サイドで非化石エネルギーへの転換に取り組むことが必要になります。一方、供給サイドでは、中長期的には水素やアンモニア等を資源豊富な海外から調達することが必要です。これには、さまざまな制約が伴います。そのため、非化石エネルギーを需要サイドで効率的に利用することが不可欠となります。すなわち、化石エネルギーのみならず、非化石エネルギーの使用も合理化する(省エネ)ことで、エネルギーの安定供給の維持につなげていくことが必要となります。

以上の背景から、省エネ法における「エネルギー」の定義が、「化石燃料及び非化石燃料並びに熱及び電気をいう」と改正されました。このうち、化石燃料及び非化石燃料の例を図2に示します。

図2 化石燃料と非化石燃料の例
図2 化石燃料と非化石燃料の例  2)

ここで、新たに加わった「非化石エネルギー」は図3のようになります。図3において、①は図2に示したもので、②は①非化石燃料を熱源として得られる熱および太陽熱、地熱など、③は①非化石燃料を熱源とした発電による電気および太陽光発電、風力発電などによる電気などをいいます。

図3 非化石エネルギーの種類
図3 非化石エネルギーの種類  2)を参考に筆者作成

2.非化石エネルギーの利用割合を向上させる目標の設定

(1) 目標の基本的考え方

業種によりエネルギーの利用状況に違いがあります。例えば、燃料・熱を主に使う事業者は、電気を主に使う事業者に比べて非化石エネルギー利用比率を向上させにくいといった特徴があります(注1)。

(注1)非化石燃料の新規入手並びに設備の大幅改造または入替が必要であるため。

そのため、非化石エネルギーの利用割合の目標については、事業者ごとの実態を踏まえて設定することとなりました。従来の省エネ法では、(化石燃料とそれを起源とする熱、電気の)エネルギー消費原単位を中長期的にみて、全事業者一律、5年度間平均1%以上低減させること(注2)が目標でしたので、この点は大きく異なります。

(注2)17業種23分野ではベンチマーク目標の達成

なお、非化石エネルギー利用割合は、事業者が消費した燃料、熱、電気を全て熱量換算(原油換算)し、そのうちの非化石エネルギー分の比率とします。

(2) 目標等に関する国のガイドライン

国は、非化石エネルギーの利用割合の目標及びその目標を達成するために取り組むべき措置を示した判断基準(図4の1)を公表します。また、国は、事業者が中長期的に実施すべき取組等を示した中長期計画作成指針(図4の2)を定めます。これらは事業者にとってガイドラインとなるものです。

(3) 特定事業者の義務—非化石エネルギーへの転換の計画立案と進捗の報告

これに対し、特定事業者等は、この判断基準に沿って、2030年度における非化石エネルギーの利用割合向上の目標を設定し、その目標達成のための取組事項を中長期計画書(図4の3)に記し、非化石エネルギー使用状況の定期報告(図4の4)をしなければなりません。

図4 非化石エネルギーへの転換に関する措置の概要
図4 非化石エネルギーへの転換に関する措置の概要   3)を参考に筆者作成

3.まとめ

2050年カーボンニュートラルに向けて、非化石エネルギーも省エネ法の対象となりました。特定事業者は、非化石エネルギーの利用割合の向上の目標およびその達成方法等を中長期計画書にまとめ、その進捗を毎年報告することになります。

その際の参考となる「事業者の判断基準」や「中長期計画作成指針」およびその他の政省令、告示など、非化石エネルギー等の取り扱いに関する詳細は今後決定されると思われますので、こまめな情報収集を行うことをお勧めします。

参考資料

回答者
エネルギー管理士 本橋 孝久

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