総合政策 夏季フォーラム2023 総括文書 (経団連)

経団連は、総合政策 夏季フォーラム2023 総括文書について、下記内容を発表しました。

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Policy(提言・報告書) 総合政策夏季フォーラム2023 総括文書― 資本主義の再構築と人材育成 ―

2023年7月21日
一般社団法人 日本経済団体連合会

3年余りに亘るコロナ禍が終焉したが、ウクライナ情勢や米中対立はその先行きを見通せない状況が継続している。世界経済は引き続きエネルギー・食糧価格上昇が危惧されており、先進諸国のインフレ克服は依然として道半ばである。また、気候変動問題等の地球規模の課題や経済格差の拡大等の問題の克服は、資本主義の持続的発展にとって喫緊の課題となっている。加えて、わが国としては、少子高齢化、労働人口の減少や労働生産性の低迷、DXやGXの遅れ等の課題への抜本的な対応が求められている。

経団連は「2023年度事業方針」において、こうした様々な課題に対して真正面から取り組んでいくことを宣言した。目の前の社会課題を成長の好機と捉え、イノベーションと投資の力強い流れを構築するとともに、円滑な労働移動を進めることで、新しい成長産業の創出に繋げる。加えて、構造的な賃金引上げや成長に必要な人材の育成・強化といった人への投資に努め、成長の果実の「適切な分配」の定着を図ることで、成長と分配の好循環を実現し、分厚い中間層を形成するとともに、それを下支えする全世代型社会保障を推進する。さらに、G7議長国の経済団体として、自由で開かれた国際経済秩序の維持強化を訴えていく。こうしたサステイナブルな資本主義に向けた取組みを通じて、Society 5.0 for SDGsの実現を目指していく。

今次夏季フォーラム2023では、第1セッションから第3セッションを通じ我々経済界を取り巻く環境をしっかりと把握したうえで、サステイナブルな資本主義を実践するための企業の責任と役割を再認識した。その後の第4セッションでは、第1分科会で成長を導き出す産業競争力強化のあり方を、第2分科会で産業競争力強化に向けた円滑な労働移動や人材育成のあり方について、第3分科会で国民が未来に向けて前向きに行動し、分配の果実を成長につなげることができるよう、将来不安の払拭につながるヘルスケアのあるべき姿を、第4分科会でわが国を取り巻く国際環境を踏まえたグローバルサウスとよばれる国々との連携・協力等について、それぞれ議論を深めた。

それらの議論を踏まえ、経団連は「サステイナブルな資本主義」の実践を通じた、Society 5.0 for SDGsの実現に向け、以下の取組みを積極果敢に進める。

  1. ① 日本の産業の強みを再認識したうえで、エネルギー政策を含む中長期的視点での産業競争力強化に向けた展望の提示。Society 5.0 for SDGsがめざす方向性と合致した形で、日本を含めたグローバル視点での価値協創とルール形成、人材育成、集中投資等の推進。「データによる価値協創プロジェクト(仮称)」(企業とステークホルダーとのデータ連携に係る事例や計画等を後押しする取組み)などの具体的な取組みの推進
  2. ② 成長産業・分野等への円滑な労働移動を促進する働き手の主体的・自律的なキャリア形成に向けた継続的な支援・社内体制の構築、リスキリングを含むリカレント教育等による能力開発といった「人への成長投資」の拡充、人の成長の成果を活かす社内外の労働移動を促進する企業における制度整備(採用方法の多様化や自社型雇用システムの確立等)。イノベーションを創出できる人材の育成。
  3. ③ 人生100年時代に誰もが健康で生きがいを感じながら働き、生活でき、多様なwell-beingを向上させることができる社会の実現に向けた健康経営の実践。最先端のバイオ技術やデジタル技術、ヘルスケアデータの利活用を推進。およびイノベーションの推進による新技術、新産業創出の促進。予防・未病の段階から難病の治療や介護に至るまで個別最適化されたヘルスケアサービス・製品を提供し、個々人が主体的に健康を管理できるヘルスケア環境を整備
  4. ④ グローバルサウスとよばれる各国・地域が抱える社会課題に対して解決策を提供することを通じて、気候変動問題をはじめとする地球規模課題の解決やわが国の経済成長の実現に貢献

政府には、前ページで述べた産業界の取組みを支えるべく、下記に掲げた諸課題に取り組むことを、強く期待する。

① Society 5.0時代の産業競争力強化に向けた取組みを推進する

  • グローバル社会の共感を得るSociety5.0視点でのDX、GX、テクノロジーのアジャイルな社会実装の支援。
  • DX、GX、スタートアップ等の重要分野における集中投資を支援。特に、カーボンニュートラルを前提とした中長期の電力需給の明確化とエネルギー政策の推進。
  • グローバルなルール形成の主導とともに、企業・業界・国境を越えたデータ連携・利活用の取組みの後押し。全体構想力のあるグローバルリーダーの育成支援。

② 働き手の成長に資する投資により、円滑な労働移動を実現する

  • 中小企業や地域に根差す企業の人材ニーズを質・量ともに満たす労働移動を含めた雇用のマッチング機能の強化。「労働移動推進型」のセーフティーネットへの移行。働き手が生涯を通じて自らの働き方を選択できるようにするためのリスキリングを含むリカレント教育等の支援。その実現に向けて持続的に取り組めるよう一般財源による国庫負担を含めた教育訓練給付の拡充、副業・兼業の一層の促進に向けた環境整備、働き方に中立な税・社会保障制度等の構築
  • 産学官連携による人材育成の推進。初等・中等・高等教育について、次世代を担う人材の起業家精神ならびに多様性や主体的なキャリア形成に資する能力を育むプログラム・カリキュラムへの変革促進

③ 社会不安を払拭するヘルスケア提供環境を確立する

  • グローバルヘルス課題に対する日本の貢献・リーダーシップ発揮と、医薬品のサプライチェーンの強靭性をはじめとしたわが国の経済安全保障の確保の視座を持ち、ヘルスケア分野を成長戦略の柱の一つに位置付け
  • ①持続可能な全世代型社会保障を念頭に置いた効率的な医療・介護提供体制の構築や受益と負担のあり方の見直し、②未病・予防段階からの健康管理、医薬品・医療機器の研究開発の促進等に資するため、データ連携基盤の構築およびヘルスケアデータ利活用の特別法の策定などヘルスケアデータの適切かつ円滑な利活用が可能となる環境の整備、③イノベーション促進に向けた研究開発支援や国民理解の醸成、創造される社会的価値の適切な評価手法の確立等

④ 開かれた国として多様性に富むグローバルサウスとよばれる国々と同じ目線で連携・協力する

  • FOIPビジョンの共有を通じた国際社会の分断の回避(G7議長国としてグローバルサウスとよばれる国々への関与を一層強化)、WTOの機能強化とEPA・FTA等経済協定の拡大、社会課題解決型のインフラ整備・DX推進、循環型社会・脱炭素社会実現に向けたアジアとの連携・協力の推進(AZEC等)
  • メルコスール等中南米・中東湾岸諸国との連携・協力を通じたエネルギー・資源・食料の安全保障の確保、人口が増加するインド・アフリカとの経済関係の強化、わが国の持続的成長を支え、日本の仲間づくりに貢献する人材の確保・育成およびクリエイティブ産業における協業促進など新産業の育成
                                                                                                                                                                                                                                                     以上

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