事例から学ぶ「IT導入補助金」(経済産業省・中小企業庁)

経済産業省・中小企業庁は、事例から学ぶ「IT導入補助金」について、下記内容を発表しました。

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が生産性の向上に資する「ITツール」を導入する経費の一部を補助し、業務の効率化や売上アップを支援する補助金です。

補助対象となる「ITツール」には、「ソフトウェア製品」や「クラウドサービス」などがあり、導入のための「サポート費用」や「設定費用」も対象に含まれます。

なお、導入するITツールは、ITベンダー(IT導入支援事業者)によって事前にIT導入補助金事務局の審査を受け、登録されたものでなくてはなりません。

事例から学ぶ「IT導入補助金」 イメージ

IT導入補助金には、「通常枠」の他に、「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」が用意されています。

今回の「事例から学ぶ」では、ミラサポplusの「事例ナビ」から、IT導入補助金の活用事例をご紹介します。

なお、IT導入補助金は、年度等によって、申請条件・補助上限・対象経費等が異なります。必ず最新の「公募要領」をご確認ください。

経営力の向上・強化のための「ITツール」の導入を支援

IT導入補助金は、業務効率化・売上アップ等の経営力向上・強化を図ることを目的とした「ITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等)」の導入を支援する補助金です。他の補助金とは異なり、事業者とITベンダー(IT導入支援事業者)が協力して申請にあたることが多いのが特徴です。

一方、ITの専門知識に乏しい事業者が、ITベンダー主導でITツールを導入した結果、導入ツールと実際の業務にミスマッチが生じてしまうケースも散見されます。このようなことを防ぐために、ITツールの導入にあたっては、事業者が経営課題を明確にしたうえで、ツールを導入することが欠かせません。

デジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」では、デジタル化に向けた経営課題のチェック、専門家によるリモート無料相談、デジタル化支援の情報提供の3つのステップで事業者のデジタル化を支援しています。ITツール導入検討にあたって、活用することをおすすめします。

なおIT導入補助金2023から、「みらデジ経営チェック」の実施が補助金の申請要件となっています。詳細については公募要領でご確認ください。

ITツールを活用して、業務の自動化・効率化を図る

ITツール導入の目的は、業務の効率化です。デジタル技術により、定型の事務作業・ルーチンワークを自動化することで、作業負担の軽減や人為的なミスの防止を図っている企業も少なくありません。

岡山県の醤油メーカーは、営業が客先を直接訪問する「御用聞き」が売上の約80%を占め、ており、顧客情報の管理業務に時間がかかっていました。この課題を解決するために、IT導入補助金を活用し、顧客のアポイントメント頻度や優先順位を数値化し、訪問優先度の高い顧客を自動的にリスト化するシステムを導入しました。

RPAの導入により定型業務を自動化し、残業時間短縮を実現

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顧客情報の管理業務などに時間が掛かり、従業員の退社時刻が遅くなるのが課題だった。RPAを課題解決につなげるため、2019年に導入。経験豊富なベテランのアポイントメントの頻度や優先順位を数値に置き換え、それを顧客リストに組み込むことにより、訪問優先度の高い顧客を自動的にリスト化できるようになった。 導入前後の1年間を比較すると、従業員の残業時間が1人当たり月3時間6分減少。顧客と親密に会話する時間が増えたことが売上げと仕事に対するモチベーション向上に貢献した。

(※ RPA(Robotic Process Automation)は、定型作業を自動化するツール)

宮崎県の住宅メーカーは、現場作業後の夜遅くまで、注文住宅の積算作業に時間がかかっていることが課題でした。IT導入補助金で、提案図面等から自動的に積算を行うことができるシステムを導入したことで、積算作業を大幅に短縮することができたそうです。

積算ツールの導入で、見積作業を大幅短縮

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CADデータから自動的に図面を起こし、作業時間が短縮。

積算に必要な材料が自動抽出され標準単価が表示されるので、チェックして修正が必要な個所を直すだけの作業に。作業工数が大幅減。

近年、IoTを活用して、業務の効率化をすすめているケースもあります。静岡県の農家は耕作面積の増加し、作業量の課題となっていました。IoTを活用した水管理システムを導入。スマートフォンやパソコンから水田の水位水温を把握し、用水路の水門を調整できるようにすることで、作業負担の軽減、作業効率の向上が実現しました。

米作りの水管理を、IoTを使ってセンシング&自動化

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耕作面積の増加・飛び地の増加により、農作業の量が年々増し、適正規模を上回るレベルになりつつあったため、身体的負荷も考え、ITを活用した省力化を模索。

パイプラインが通っている田んぼには、水田センサーおよび給水弁を設置したことで、水温や水量をその場にいなくてもタブレット等から把握でき、給水弁の開け閉めも遠隔操作可能となった。

今後は、AI等のデジタル技術の進化により、「自動化・効率化」できる業務の領域は拡大することが予想されます。このような技術へのアンテナを高くしていくことが、経営者には求められます。

また、ITツールの導入にあたっては、業務分析、業務フローの明確化が欠かせません。この部分をITベンダーに任せきりにすると、ITツールと実際の業務との間にミスマッチが起こり、結果として効率化が進まないケースもあります。

デジタル技術で、人手不足の解消、労働環境の改善

中小企業・小規模事業者のなかには、人手不足に悩む事業者も少なくありません。IT導入補助金を活用して、業務を効率化するITツールを導入し、人手不足の解消、労働環境の改善につなげている事例をご紹介します。

仙台市の焼肉店は人手不足により、ランチの営業も大変な状態が続いていました。そこでIT導入補助金により、客席のタブレットからオーダー情報が厨房に届く「セルフオーダーシステム」を構築しました。これにより、現場が6人工から5人工で回せるようになったそうです。また蓄積された注文データをメニュー改善にも役立てています。

セルフオーダーで人手不足に対応。営業時間増へ

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顧客が自ら画面からオーダーし、その情報が厨房に届くので、正確さ・スピードが向上。

スタッフは料理を運ぶことや接客に専念でき、聞き間違いがなくなった。6人必要だった現場が5人で回せるようになった。シフトの自由度が増し、ランチ営業を再開できる見込みが立った。

同じ営業時間で利益が上昇。

データを見て、男女比率やメニューごとのオーダー数などを確認。メニュー改善の判断に活用している。

新潟県の温泉旅館も、深刻な人手不足に悩んでいました。そこで同業他社の導入事例を参考に、IT導入補助金で、顧客管理・予約管理・売上管理等の宿泊業の業務に対応したITツールを導入。一部の部屋については部屋割りも自動化でき、人手のかかる事務作業が大幅に削減できました。

部屋割りも調理連絡も自動化・時間の有効活用へ

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ネットからの予約データを自動で取り込み、一部の部屋は部屋割りも自動化。手入力・手作業していたのに比べ大幅に効率アップ。また予約データから調理予定を自動計算。手作業が大きく減った。

仲居は、スマートフォンから顧客情報の確認やメニューの変更などを手元で素早く行えるように。効率化と同時にミスが減少。

売掛金のデータが会計システムに自動反映され、入力作業が不要になった。

東京都の運送会社は、小口配達が増えたことで、ドライバー不足・過重労働のリスクが高まっていました。そこで、運送事業者に特化したクラウド勤怠管理システムを導入。全員の勤務状況が把握でき、基準時間を超えそうな場合はアラートが出るため、安全を確保し働きやすい環境整備に役立っています。

安全で質の高い運送を勤怠状況の把握で先手を打つ!

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出退勤時間の入力、およびドライブレコーダーの記録・日報による運転時間の入力で、本社にて全員の勤務状況が把握可能となった。

基準時間を超えそうな危険域に近づくとアラートが出るため、事前調整が可能になり、安全を確保し働きやすい環境整備ができた。

事業者の業種・業態に特化したITツールの導入

IT導入補助金事務局に登録されている「ITツール」は、多種多彩です。ITベンダー・ITツールは、IT導入補助金ホームページの「IT導入支援事業者・ITツール検索」で調べることができます。

このようなITツールのなかには、事業者の業種・業態に特化したものもあり、業務とのミスマッチが生じにくいという利点があります。

神奈川県の介護サービス会社は、介護職員の事務負担を減らし、介護業務に専念できるように、訪問介護サービスの記録・連絡を支援するシステムを導入しました。手書きの報告書作成作業がなくなり、月末の事務作業が大きく削減されたことで、介護職員が利用者との接触時間を増やすことできました。

スマホによる訪問介護記録導入で、専門職の力を活かせる体制に

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利用者宅では、スマートフォンのタッチにより出退勤時間の記録ができ、サービス内容報告もスマートフォンで完了。手書きの報告書作成作業がなくなり、現場ではよりサービスに時間を使えるようになった。

訪問介護実績を請求システムに入力する作業が不要になり、日々データを確認しておくことで月末作業は大きく削減された。専門職は利用者との接触時間を増やすことできた。

ペーパーレス化により、記録用紙の分類・保管業務がなくなった(一部必要な書類は紙で残している)。

サービス提供責任者を事務作業から解放し、現場業務や指導に当たる時間が確保できる目途が立った。休暇も取りやすくなる。

大津市のクリーニング会社は、需要が高まる宅配クリーングに対応するため、訪問型のクリーニング受付に特化したソフトウェアを導入。注文・請求業務が効率化しただけでなく、顧客ごとの傾向や売上等のデータを手間なく把握できるようになりました。

拡大する宅配クリーニング分野を、新システムで安定運営

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ITベンダーの事業縮小により、関西支店が閉鎖。端末が故障した際の緊急対応に不安があり、新システムへの入れ替えを模索した。

IT導入補助金を利用して新システムを導入したところ、請求書発行等の業務が効率化。

顧客ごとの傾向や売上等のデータを手間なく把握できるようになった。

京都府の保育園は、ITを活用して保育士の事務負担を軽減し、子どもと接する時間を増やせしたいと考え、保育サービス(保護者との連絡、日誌作成、健康記録など)や事務処理(登園降園打刻、保育料の計算など)をサポートするITツールを導入。保育士の負担が軽減しだけでなく、保護者とのコミュニケーションも向上しました。

保護者との連絡帳をスマホアプリで利便性に加え成長記録にも

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園児の登園・降園時間をタブレットで打刻し、正確なデータを自動記録できるようになった(延長保育の記録にもなる)。

保護者との連絡・情報共有をアプリ(ネット上)で行い、迅速な連絡、ペーパーレスによる効率化、給食の写真など豊かな情報共有が実現した。

クラウドサービスであるため、出退勤状況やデータの確認・整理は神戸の事務所でも行える。

蓄積されたデータを整理し卒園時に成長記録を渡すなど、付加価値提供が見込める。

このような業種に特化したITツールは、導入事例(導入企業)について十分に調査することが大切です。できれば、導入した同業と直接会い、話を聞くようにしましょう。

ITツールを、経営課題の解決につなげるために

IT導入補助金の目的は、経営力の向上・強化を図ることであり、ITツールはそのための手段です。事業環境から自社の強み・弱みを認識、分析し、「経営課題の解決につながるITツール」を導入するための補助金です。

たとえば、札幌市の建設会社は、日報・原価管理・給与等のデータを連携させることで、日報のデータから、物件ごとの原価を計算できる仕組みを構築しました。「経営の見える化」を進めたことで、受注物件ごとの月次利益が以前よりも早いタイミングで分かるようになり、社員の原価意識の向上につながっています。

基幹業務のデータ連携により、原価計算を大幅に効率化

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日報のデータを簡単に原価管理システムに連携でき、処理業務がシンプルに。操作時間が大幅に削減され、体感で約30%のコスト削減。

受注した物件ごとの月次利益集計に要する期間が、1週間以上短縮された。

社員は以前より早いタイミングで月次結果を見ることができ、「社員数が増えても原価意識を高めていたい」との考えに応えられる仕組みとなった(時間が経つと過去のものとなるが、すぐにわかれば振り返り次の改善につなげやすい)。

ITツールを経営改善につなげていくためには、経営課題を明確にすることが必要です。導入にあたっては、よろず支援拠点などの公的支援機関やデジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」の専門家に相談してみることも、一案です。ぜひご活用ください。

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