知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン)

政府広報オンラインは、知っておきたい認知症の基本について、下記内容を発表しました。

「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が認知症になったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。そもそも、認知症とは?症状が出たらどうすればいい?家族や周囲は、本人とどう接したらいいの? 困ったときに気軽に聞ける相談先は?そのような疑問にお答えします。

目次

  • 1
    「認知症」ってどんな病気?
  • 2
    認知症の予防って?
  • 3
    認知症かな?と思ったら?
  • 4
    若年性認知症の人へのサポートは?

コラム

  • 1
    認知症施策推進大綱
  • 2
    認知症バリアフリーの取組について

1「認知症」ってどんな病気?

「認知症」とは、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。

我が国では高齢化の進展とともに、認知症の人も増加しています。65歳以上の高齢者では、平成24年度(2012年度)の時点で7人に1人程度とされ、年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています(※1)。なお、認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI ※2)の人も加えると4人に1人の割合となりますが、MCIの方が全て認知症になるわけではありません(下図参照)。

また、65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と呼んでいます(「4 若年性認知症の人へのサポートは?」参照)。今日、認知症は、だれもがなりうる病気と考えられています。

65歳以上の高齢者における認知症の現状をピラミッドで表した図。認知症有病者は全体の15%、認知症の前段階といわれるMICの高齢者は全体の13%。

※1:出典『都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応』(平成25年3月・朝田隆)
※2:MCI=Mild Cognitive Impairment
正常と認知症の中間ともいえる状態のことだが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない。MCIの人のうち年間で10%から15%が認知症に移行するとされている。

年をとればだれでも、思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが困難になったりしますが、「認知症」は、このような「加齢によるもの忘れ」とは違います。

高齢の母親と会話をしながら、母親の認知症の兆候に気づく娘。

「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い(一例)

加齢によるもの忘れ 認知症によるもの忘れ
体験したこと 一部を忘れる
例)朝ごはんのメニュー
全てを忘れている
例)朝ごはんを食べたこと自体
もの忘れの自覚 ある ない(初期には自覚があることが少なくない)
日常生活への支障 ない ある
症状の進行 極めて徐々にしか進行しない 進行する

また、認知症とよく似た状態(うつ、せん妄)や、認知症の状態を引き起こす体の病気もいろいろあるため(甲状腺機能低下症など)、早期に適切な診断を受けることは大切です。
認知症の原因となる病気について、代表的なものは以下のとおりです。

認知症の原因となる病気

アルツハイマー型認知症

認知症の原因としては最も多いといわれており、長い年月をかけて脳に、アミロイドβ、リン酸化タウというタンパク質がたまり認知症をきたすと考えられています。記憶障害(もの忘れ)から始まることが多いですが、失語(音として聞こえていても話がわかりにくい、物の名前がわかないなど)や、失認(視力は問題ないのに、目で見えた情報を形として把握し難い)、失行(手足の動きは問題ないのに、今までできていた動作を行えない)などが目立つこともあります。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害によって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり認知症をきたすものをいいます。脳血管障害を起こした場所により症状は異なりますが、まひなどの体の症状を伴うことが少なくありません。

レビー小体型認知症

脳にαシヌクレインというタンパク質がたまり、認知症をきたすと考えられています。記憶障害などの認知機能障害が変動しやすいことのほか、ありありとした幻視(実際にはないものが見える)や転びやすい、歩きにくいなどのパーキンソン症状、睡眠中に夢をみて叫んだりするなどの症状を伴うことがあります。どの症状が先に出てくるかはそれぞれです。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉と側頭葉が病気の中心として進行していき、同じ行動パターンを繰り返したり、周囲の刺激に反応してしまうなどの行動の変化が目立つ「行動障害型」と言葉の障害が目立つ「言語障害型」があります。

2認知症の予防って?

今日の我が国では、認知症の予防とは、認知症にならないという意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするという意味で、「認知症施策推進大綱」に基づいて認知症についての様々な取り組みが進められています(コラム)。

認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症や血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)との関連があるとされています。例えば、バランスの良い食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、ふだんからの生活管理が認知症のリスクを下げると考えられています。

認知症の早期診断・早期治療につなげるために、自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「もしかして認知症では」と思われる症状に気づいたら、一人で悩まず専門家などに相談しましょう。

3認知症かな?と思ったら?

主な相談先は次のとおりです。

主な相談先

かかりつけの医師

医療機関の「もの忘れ外来」

下記のウェブサイトから検索できます。
公益社団法人 認知症の人と家族の会「全国もの忘れ外来一覧」別ウインドウで開きます

東京都認知症疾患医療センター別ウインドウで開きます

認知症に関する相談窓口

下記のウェブサイトから、市町村等に設置されている認知症に関する相談窓口や、地域包括支援センター等を検索できます。
介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」別ウインドウで開きます

認知症の電話相談(公益社団法人 認知症の人と家族の会)

電話番号 0120-294-456
受付時間:午前10時から午後3時
(月曜日から金曜日 ※祝日除く)
※携帯電話・スマートフォンの場合は050-5358-6578(通話料有料)
このほか、全国47か所の支部でも電話相談を受け付けています。
詳しくは、同会のホームページ別ウインドウで開きますまで。

認知症になる可能性は誰にでもあります。私たちと同様、認知症を患った方々の心情も様々です。また、「認知症の本人は自覚がない」という考えも大きな間違いであり、最初に症状に気づき、誰より一番不安になって苦しむのは本人なのです。
認知症の人は理解力が落ちているものの、感情面はとても繊細です。あたたかく見守り適切な援助を受ければ、自分でやれることも増えていくでしょう。認知症という病気を理解して、さりげなく自然で優しいサポートを心がけましょう。

参考
「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条

1.見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。
認知症の始まりは、ちょっとしたもの忘れであることが多いもの。単なる老化現象とまぎらわしく、周囲の人にはわかりにくいものです。あれっ、もしかして?と気づくことができるのは、身近な家族だからこそです。

2.早めに受診を。治る認知症もある。
認知症が疑われたら、まず専門医に受診すること。認知症に似た病気や、早く治療すれば治る認知症もあるのです。また、適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などをきちんと診断してもらうのは不可欠です。

3.知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症では、症状の出方や進行、対応が違います。特徴をよく知って、快適に生活できるよう、その後の家族の生活や介護計画づくりに役立てましょう。

4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
介護保険など、サービスを利用するのは当然のこと。家族だけで認知症の人を介護することはできません。サービスは「家族の息抜き」だけでなく、本人がプロの介護を受けたり社会に接したりする大事な機会です。

5.サービスの質を見分ける目を持とう。
介護保険サービスは、利用者や家族が選択できるのが利点。質の高いサービスを選択する目が必要です。また、トラブルがあったときは、泣き寝入りせず、冷静に訴える姿勢を持ちましょう。

6.経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
介護経験者が培ってきた知識や経験は、社会資源の一つ。一人で抱え込まずに経験者に相談し、共感し合い、情報を交換することが、大きな支えとなります。

7.今できることを知り、それを大切に。
知的機能が低下し、進行していくのが多くの認知症です。しかし、全てが失われたわけではありません。失われた能力の回復を求めるより、残された能力を大切にしましょう。

8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
認知症の人の実態をオープンにすれば、どこかで理解者、協力者が手をあげてくれるはず。公的な相談機関や私的なつながり、地域社会、インターネットなどの様々な情報を上手に使い、介護家族の思いを訴えていきましょう。

9.自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
介護者にも自分の生活や生甲斐があるはず、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思わないように自分自身の時間を大切にしてください。介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。

10.往年のその人らしい日々を。
認知症になっても、その人の人生が否定されるわけではありません。やがて来る人生の幕引きも考えながら、その人らしい生活を続けられるよう、家族で話し合いましょう。

出典元:公益社団法人認知症の人と家族の会

4若年性認知症の人へのサポートは?

65歳未満で、認知症を発症した場合、就労に関することや経済的な負担、育児の問題など高齢者と異なる課題が多くみられます。そのため若年性認知症の人を対象とした専門的なサポート制度を利用することができます。

若年性認知症に関する相談

若年性認知症ハンドブックPDFファイルが開きます

若年性認知症コールセンター

電話番号 0800-100-2707
受付時間:午前10時から午後3時(水曜日は午前10時から午後7時)
(月曜日から土曜日 ※年末年始・祝日除く)
※社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修大府センターが運営しています。
※相談は専門教育を受けた相談員が対応。個人情報は厳守されます。

若年性認知症に関する相談窓口一覧別ウインドウで開きます

コラム1

認知症施策推進大綱

認知症はだれもがなりうるものです。家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっています。令和元年(2019年)6月には関係閣僚会議においてとりまとめられた「認知症施策推進大綱」に基づき、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人やその家族の視点を重視しながら「共生」と「予防」を車の両輪とした施策を推進しています。

【注】

  • 「共生」とは…認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きる、という意味です。
  • 「予防」とは…「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味です。

認知症施策推進大綱の5つの柱

1 普及啓発・本人発信支援
2 予防
3 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
4 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
5 研究開発・産業促進・国際展開

これらの施策は全て認知症の人の視点に立って、認知症の人やその家族の意見をふまえて推進することを基本としています。

主な施策

(1)「認知症初期集中支援チーム」
認知症初期集中支援チーム:認知症初期から家庭訪問を行い、症状を把握しながら家族への支援などを行うチーム。(看護師、保健師、作業療法士など)

(2)「認知症疾患医療センター」の設置
認知症疾患医療センター:認知症の速やかな鑑別診断や行動・心理症状(BPSD)と身体合併症に対する急性期医療、専門医療相談、関係機関との連携等を担う、地域の認知症医療の拠点。

(3)「認知症地域支援推進員」の配置
認知症地域支援推進員:発症しても住み慣れた地域で生活できるよう効果的な支援を行う。

(4)「認知症サポーター」の養成と活動支援
認知症サポーター:認知症について正しく理解し、本人やその家族をできる範囲で支援する方々。担っているのは地域住民、金融機関やスーパーマーケットの従業員、小・中・高校の生徒など様々。

(5)「チームオレンジ」の仕組み
チームオレンジ:本人・家族のニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組み。

(6)「認知症カフェ」などの設置・普及
認知症カフェ:認知症本人やその家族、地域住民、専門職などが、相互に情報を共有しお互いを理解し合う場。地域の介護通所施設や公民館、喫茶店など様々な場所で開催。

(7)「通いの場」の拡充
通いの場:介護予防に資する住民主体の場。

詳しくは下記をご覧ください。

コラム2

認知症バリアフリーの取組について

日本認知症官民協議会

認知症施策を社会全体で推進していくため、行政のみならず、民間組織の経済団体、医療・福祉団体等の各業界から約100団体が参画し、平成31年(2019年)4月に「日本認知症官民協議会」が設立されました。本協議会では、認知症バリアフリーの取組を推進するため、認知症の人を含む高齢者が利用することが多い「金融」「住宅」「小売り」などの業種における接遇の手引きの作成・周知や、「認知症バリアフリー宣言」制度の運用を行っています。

詳しくは下記をご覧ください。

認知症バリアフリー宣言

認知症バリアフリーに向けた取組を行おうとしている企業等が、自らWeb上で「認知症バリアフリー宣言企業」として宣言を行うことを通じて、認知症の人やその家族の方々にとって安心して店舗やサービス・商品を利用してもらったり、企業等の人材育成や地域連携の取組を推進していく制度。令和4年(2022年)3月からスタートした制度で、下記ポータルサイトから申請することができます。

詳しくは下記をご覧ください。

(取材協力:厚生労働省  文責:政府広報オンライン)

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