経済産業省・中小企業庁は、相手とのやりとりが「見える」、AI搭載のIP電話で急成長「株式会社RevComm(レブコム)」と題して、下記内容を発表しました。
アイデアの具現化に苦労
RevCommの會田武史社長は1989年、東京・世田谷生まれ。祖父が1950年に興した文房具メーカーを父が引き継ぎ、長男の會田さんは3代目になるはずだった。だが、持ち前の反骨心から「敷かれたレールには乗っかりたくない」と思った。姉や弟もいて家業は心配ない。2009年に米の大学へ留学した。
リーマンショックの直後にもかかわらず、米国には何か起業してみよう、失敗したら次は何をやろうと考える人が多かった。刺激を受けた會田さんは自らも起業を考えたが、やりたいことがなかなか見つからない。帰国後しばらく経った2011年に入社試験を受け三菱商事に入社、自動車を中東やトルコ、ウクライナなどに売り込む仕事で貿易業務や新会社設立などビジネスの基本やノウハウを学んだ。
2017年2月、商社に勤めながら週末起業したものの、ピボット(方向転換)は10回を数えた。「今後数年間で間違いなくニーズが高まるもので、いま自分が苦痛に感じていることはなんだろう」と必死に考えていったら「AI×音声×クラウド」に辿り着いた。満を持して退社し同年7月にRevCommを設立した。
始めから「MiiTel」ができていたわけではない。まず直面したのは自分の頭の中にある新サービスの具現化だった。顧客候補の会社は「セールスマンが自分の業務を振り返りにくい」「社内で情報共有するときにバイアスがかかる」「事例を挙げた指導ができない」など、それぞれ問題を抱えている。だが、これらの問題はじつは「セールスマンと相手との話が見えない」ために生じている。表面的な課題を個別に解決するのではなく、その下に潜む本質的課題を見つけるまでが関門だった。
次はこの本質的課題を解決するプロダクトの内製だ。エンジニアを探し「AI搭載型のIP電話を作って」とやみくもに頼んでも、正しい制作意図が伝わらなければ使われないプロダクトができてしまう。「あ、そういうのがあったら良さそうだね」と言ってもらえるまで、手書きメモを何百枚も書いて説明した。
業務の生産性向上に寄与
そうして誕生したのが2018年10月にサービスを開始したAI搭載のクラウドIP電話「MiiTel」だ。AIが電話営業コールセンターなどの会話を音声認識、担当者と顧客が話す速度や抑揚、声の高さ・大きさ、双方が話した時間や沈黙の回数、相手の話の途中で話をかぶせていないかなどを解析して電話応対を「見える化」する。さらに会話のやりとり全文を文字に起こして要約もする。
Web画面やスマホアプリからインターネット網で電話をかけるため、電話機や通話・録音費が要らないし、コールセンターのスペースも不要。従業員は出勤しなくても仕事ができる。電話営業の課題や改善点が見えるから、セールスやコールセンター担当者の会話の質が高まり、社内の教育コストが減らせる。何より電話営業で顧客と担当者が「何を、どのように」話しているか社内で確認しきれない「ブラックボックス問題」を解消できる。
2021年1月にはオンライン商談ツール「MiiTel Live(ミーテルライブ)」のサービスも開始した。いわば「MiiTel」の会議版だ。会話のブラックボックスは電話以外のWEB会議、WEB商談のシーンでも起きている。会議や商談の当事者間でどんな話がされているかわからないから、労働集約型の属人的業務になってしまう。会議内容を可視化すれば生産性の高い業務にシフトできるはずだ。
総務省人口推計によれば2019年の日本の生産年齢人口(15~64歳)は約7500万人で2060年には4400万人に減る。厚生労働省の2020年人口動態統計では1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.34だった。「人口が減少し出生率も低い日本が、経済、社会、文化的により豊かな未来をつくるには生産性の向上しかありません」と會田さん。「電話営業の応対では毎回同じようなやりとりが発生するが、それは人間でなくてもできる。AIにもできる仕事は省いて、人間だからできるクリエイティブな仕事に時間をかける方が効率的」とみる。
顧客数が急増中
同社のサービスはサブスクリプション(定額制)だ。「MiiTel」は月額6980円。いきなり年間契約・全社契約するのではなく、とりあえず1か月試せるよう単月から契約可能で、1年契約したら1か月分が無料になる。「MiiTel」ユーザーはIT、金融、製造、不動産など各業界大手から明治時代創業の老舗企業まで2021年5月末で約850社、「MiiTel」経由の電話営業も4800万件を超えた。2019年末から顕在化した新型コロナ感染症の影響で、訪問を伴わずオフィスにいながら営業する「インサイドセールス」が主流になっており、「MiiTel」はコロナ禍に直面するユーザーにも重宝されているという。
顧客数の急増に連動し、2020年に20人前後だったRevCommの社員数は、2021年春に100人弱と1年で5倍に増えた。本社はレンタルオフィスで、社員のほとんどは「MiiTel」を活用してテレワークをしている。ユーザーだけでなく、RevComm自らの生産性も高そうだ。
将来は音声解析のプラットフォーマーに
今後の展開はまず「MiiTel」機能の拡充だ。1、2年後を目途に人間を電話営業から解放する「自動でアポイントを取るAI」を実現する。同時に海外展開も進める。すでにインドネシアとフィリピンでテストマーケティングに着手してニーズがあることは分かっている。
「MiiTel Live」は会議データの分析ができるから、データを集積し会社設立10年後の2027年に「経営判断AI」をつくる。経営判断のビッグデータを集める解析エンジンのプラットフォーム化が最終目標だ。いまはインターネットで提供するソフトウエアサービス(SaaS)だが、いずれはソフトウエアを稼働する土台になるプラットフォームサービス(PaaS)を提供したい。音声解析エンジンのプラットフォーマーになれば、インサイドセールスやコールセンター以外にも医療や介護、人事などビジネス全般で使われるはずだ。
そのためには、とにかく人材確保だ。海外ビジネスは現地に優秀な人がいないと立ち上がらないし、「自動アポ取りAI」を自前で作るには音声合成や自然言語処理などの技術が必要になる。「全方位的に人が要る。国籍も性別も関係なく優秀な人材を集めたい」と會田さん。「課題が大きければ大きいほど燃える」と力を込めた。
企業データ
- 企業名
- 株式会社RevComm
- Webサイト
- 設立
- 2017年7月
- 資本金
- 16億7100万円(2021年4月現在、資本準備金含む)
- 従業員数
- 約100人
- 代表者
- 會田武史氏
- 所在地
- 東京都渋谷区渋谷1-3-9 ヒューリック渋谷1丁目ビル7階
- Tel
- 03-4405-4621
- 事業内容
- AI×Voice×Cloudのソフトウエア、データベース開発
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