政府広報オンラインは、「困った!解雇や雇止め、パワハラ…」そんな職場のトラブルの相談は労働委員会へを掲載しました。
解雇、雇止め、パワハラ…。こうした労働トラブルの相談窓口として、「労働委員会」があります。労働委員会は都道府県の行政機関で、労働者個人と事業者の間に生じた職場のトラブルについて、「個別労働関係紛争処理制度」によって中立・公正な立場でその解決を支援します。職場のトラブルでお困りのときは、一人で悩まず、労働委員会に相談しましょう。
1.労働委員会ってどんな機関?
労使間のトラブルを解決するために、法律によって各都道府県に設置された行政機関です
「正当な理由がないのに解雇された」「契約更新を断られた」「職場でパワハラを受けている」「休暇を取らせてもらえない」「採用が内定していたのに説明なく取り消された」…。もしも、こうした職場のトラブルに遭ったとき、皆さんはどこに相談しますか。
社内に相談窓口や労働組合がある場合には、そこに相談するという方法があります。社内に相談窓口がない、社内の人には相談しづらい場合には、下図のように外部にも様々な相談窓口(詳しくは文末のコラム2を参照)があります。その一つが「労働委員会」です。
職場のトラブルには、労働組合と使用者との間で生じるもの(集団的労使紛争)と、労働者個人と使用者との間で生じるもの(個別労働関係紛争)があり、各都道府県に設置されている労働委員会では次のような支援を行っています。
労働組合と使用者との間で生じた紛争(集団的労使紛争)に対しては
- 労働争議が発生した場合、労働者、使用者双方から事情を聴取し、あっせん、調停、仲裁などによる解決を図ります(労働争議の調整)
- 使用者が不当労働行為を行っていたかを審査し、不当労働行為があった場合、是正させる命令を出して、労働組合や組合員の救済を図ります(不当労働行為の審査・救済)
労働者個人と使用者との間で生じた紛争(個別労働関係紛争)に対しては
- 労働者、使用者双方から事情を聴取し、あっせんによって、当事者同士の自主的な解決を支援します(⇒個別労働関係紛争処理制度)
ここでは、労働者個人と使用者との間で生じたトラブルに対し、労働委員会があっせんを行う「個別労働関係紛争処理制度」について紹介します。
※2 福岡県では、労政主管部局が行う個別労働関係紛争のあっせんにおいて、事案の内容に応じ、労働委員会委員があっせん員となるあっせんを行っています。
※3 神奈川県、大阪府では、個別労働関係紛争のあっせんは、原則として、労政主管部局が先に行います。
2.労働委員会の個別労働関係紛争処理制度とは?
公労使の三者で構成される労働委員会が、当事者同士の話し合いによる解決を支援します
労働委員会の個別労働関係紛争処理制度は、労働者個人と使用者(事業主)との間で、労働条件などに関するトラブルが発生したときに、労働委員会のあっせん員が間に入り、当事者同士の歩み寄りを促し、あっせん案を提示するなどして、トラブルの解決を図る制度です。各道府県労働委員会によって、名称や制度内容、処理方法は異なりますが、次のような特徴があります。
労働委員会の個別労働関係紛争処理制度の特徴
- あっせん員は、労働者委員、使用者委員、公益委員の三者で構成され、中立・公正な立場で解決を支援します
- あっせん期日は回数に制限がなく、双方が納得するまで話し合いができます
- あっせんの手続は非公開で行われます
- 利用は無料で、話し合いの秘密は守られます
対象となる職場のトラブル
「突然解雇された」「契約更新をしてもらえなかった」「職場でパワハラを受けている」「休暇がとれない」「転勤に納得できない」「最初に聞いていた労働条件と違う」など、職場での様々なトラブルが対象になります。
労働者が職場に改善を求めたが、話し合いに応じてもらえないなど、当事者同士で自主的なトラブル解決が困難な場合に利用できます。
※あっせんの対象として適当でない事案を除きます。詳しくは道府県労働委員会にお問い合わせください。
3.利用するには?
事業所がある道府県の労働委員会にご相談ください
職場のトラブルでお困りの際は、まずは、道府県労働委員会にご相談ください。
労働委員会の個別労働関係紛争処理制度によるトラブル解決を希望する場合は、事業所の住所がある道府県の労働委員会であっせんの申請を行います。申請に当たっては、あっせん申請書を労働委員会に提出します。
なお、あっせんの申請は、労働者だけではなく、使用者(事業主)が行うこともできます。
あっせん申請からトラブル解決までの流れは次のとおりです。
- 1回のあっせんで解決しなかった場合、双方が納得するまで何度もあっせんを行うことができます。
- 相手方があっせんに応じなかったり、あっせんの必要がなくなったりした場合には、申請者の「取下げ」によってあっせんが終了します。
申請からあっせんが終結するまでの期間は、平均して約41日(平成28年度実績)で、約4割は1か月以内に終結しています。労働委員会の個別労働関係紛争処理制度は、無料で、簡単な手続で迅速にトラブル解決ができる手段といえます。
コラム1
解決事例
労働委員会の個別労働関係紛争処理制度によって解決された事例を紹介します。
「突然の解雇」に対するあっせん
勤務先のA社の社長から突然解雇を告げられたBさん。解雇の撤回を求めて、何度もA社に話し合いを求めましたが、相手にされませんでした。
そこで、Bさんは解雇の撤回または補償金の支払いを求めて、労働委員会にあっせんを申請。あっせん員の説得に応じて、社長はあっせんに参加することになりました。
あっせん員は、法律や判例に照らして、Bさんの解雇の理由はあいまいで、解雇が認められないことを説明し、復職の可能性を探りました。しかし、社長は、補償金は支払うがBさんの復職に応じるつもりはないと主張。あっせん員は、解雇の理由に無理はあるが、復職は難しいと判断し、Bさんにこれらの事情を説明し、双方に歩み寄りを勧めました。
その結果、Bさんは会社都合による「合意解約」を受け入れる一方、A社は対応が不誠実だったことを認め、解決金を退職金に上乗せすることであっせん案を提示。双方がこれを受け入れ、解決に至りました。
「引っ越しを伴う転勤」に対するあっせん
勤務先のC社から引っ越しを伴う転勤を命じられたDさん。しかし、Dさんは介護を必要とする同居家族がいるため、これまで引っ越しを伴う転勤がありませんでした。Dさんは家庭の事情を会社に伝え、転勤命令の撤回を求めましたが、聞き入れてもらえず、労働委員会にあっせんを申請しました。
あっせんに参加したC社は、「Dさんは家族を介護していることを届け出ておらず、知らなかった。突然言われても適正な人事配置ができず現場は困っている。転勤に応じてほしい」と説明。一方、Dさんは、会社が自分の家族の状況を当然知っているはずだと思い違いしていたことが判明しました。そして改めて家族が引っ越しに耐えられないことを説明しました。あっせん員は、お互いのコミュニケーション不足がトラブルの原因と考え、双方に歩み寄りを勧めました。
その結果、Dさんは引っ越しを伴う転勤命令を受け入れ、その代わりC社もDさんの家庭事情を考慮し、Dさんが家族を介護できるよう、真摯(しんし)に対応するというあっせん案を提示。双方がこれを受け入れ、解決に至りました。
(参考:鳥取県公式サイト「労使ネットとっとり」における解決事例より)
コラム2
職場のトラブルの解決に関する相談窓口
職場のトラブルを解決したい場合には、下記のような公的な相談窓口があります。
都道府県労働委員会
各都道府県が設置する行政機関です。地域の実情に応じ、職場のトラブルの未然防止や自主的解決を促進するため、労働者や事業主に対する情報提供や相談、あっせんを行います。
都道府県労働委員会 所在地一覧
※2 福岡県では、労政主管部局が行う個別労働関係紛争のあっせんにおいて、事案の内容に応じ、労働委員会委員があっせん員となるあっせんを行っています。
※3 神奈川県、大阪府では、個別労働関係紛争のあっせんは、原則として、労政主管部局が先に行います。
都道府県労働局
厚生労働省の地方支分局として全都道府県に設置されている国の行政機関で、総合労働相談コーナーを設置して、情報提供や労働相談に応じるほか、紛争調整委員会によるあっせん(あっせん期日は原則として1回)を行っています。
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簡易裁判所・地方裁判所
職場のトラブルの解決のために、「民事調停」や「少額訴訟」「民事訴訟手続」「労働審判」などの手続があります。
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