厚生労働省は、「第10回労働政策審議会労働政策基本部会」の資料を公表しました。
内容の骨子は、下記の通りです。
(ポイント)
1.雇用・労働を取り巻く現状と課題 日本では、1995 年をピークに生産年齢人口の減少が進行している。2015 年に 60.8%だった総人口に占める生産年齢人口の割合は、2065 年には 51.4%になる と推計されており、今後も長期にわたって労働供給制約状態が継続する。 同時に、日本は健康寿命が世界一の長寿社会、いわゆる「人生 100 年時代」 を迎えており、人々は、 「教育・仕事・老後」という3ステージの単線型の人生 だけではなく、ライフステージに応じて仕事や学習など様々な生き方を柔軟に 選択できる「マルチステージ」の人生を送るようになることが期待される。 一方、AI 等の新技術に代表される第四次産業革命と呼ばれる技術革新が、非 常に速いスピードで世界的に進行しつつあり、グローバル化の深化や、インター ネット上のプラットフォームの台頭、 IoT の普及による情報収集の進展ともあい まって、ビッグデータ・ビジネスやシェアリング・ビジネスなど新たなビジネス モデルが次々と生まれている。 そうした一連の変化は、新たな商品やサービスを生み出して消費者としての 日々の生活を変えるだけでなく、仕事を取り巻く環境や働き方にも大きな変化 をもたらしうる。 例えば、AI 等の新技術の活用によって多くの仕事の生産性が向上し、その成 果が適正に分配されれば、労働供給制約下であっても、豊かで活力ある暮らしを 維持することが可能となるだろう。 働き方の面では、職場でしかできなかった作業を、IT 機器と通信ネットワー クを使って自宅など職場以外の場所で行い、通勤時間の短縮等により、時間を有 効に活用するという働き方は、すでに現実のものとなっているし、雇用されるこ とにこだわらず独立したり、複数の会社と緩やかにつながって働くという選択 肢も、インターネットに媒介され広まる兆しがある。 労働供給の制約と人生 100 年時代の到来に直面する日本社会にとって、働き 方の選択肢が拡大することは、働きたいという意欲のある人の参加の機会を拡 げるとともに、「マルチステージ」という生き方を可能にするものである。 ただし、働き方の変化が、個人、企業、そして社会全体にとって望ましい影響 をもたらすには、個人の側には変化する社会の中で自ら前進を続ける前向きさ が、企業の側には多様な働き方を受け入れて活用する柔軟さが求められる。 労働政策は、そうした個人と企業を積極的に支援すべきである。
2.労働政策基本部会設置に当たっての問題意識 上記のような雇用環境や働き方を取り巻く状況の変化の中、多様な働き方の ニーズに対応した政策決定プロセスの在り方を検討するため、 「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」が平成28 年7月に立ち上げられた。本会議の報 告書においては、 「働き方やそれに伴う課題が多様化する中、旧来の労使の枠組 みに当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などの基本的課題につ いては、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方 がよい」との問題意識に基づき、公労使同数の三者構成ではなく様々な分野や立 場の有識者からなる「労働政策基本部会」を労働政策審議会本審の下に設置し、 時代の変化を先取りしつつ機動的な政策決定が行える体制を作るという新たな 考え方が打ち出された。 これを受け設置された労働政策基本部会では、時代に対応あるいは先を見据 えた働き方の課題やこれまでの「労働者」や「労使」の枠組みを超えた課題など の、働き方を取り巻く新たな中長期的課題について検討することとし、審議を進 めてきた。
3.労働政策基本部会における審議事項 第4次産業革命と呼ばれる技術革新を受けて、AI、IoT、ビッグデータ及びロ ボットといった技術革新の雇用・労働への影響が各国で議論され、技術革新によ る失業が生じる可能性も指摘されている。日本としてもAI 等の新技術を活用し た Society 5.0 の実現を目指しつつ、特に AI 等の技術革新が雇用・労働に与える影響について議論し、その対応策を検討する必要がある。このような影響は、労働者の人材育成や生産性向上の在り方を検討する際に考慮しなければならない点である。このことから、働き方を取り巻く新たな中長期的課題について検討 することとした労働政策基本部会では、第一に、こうした「技術革新(AI 等) の動向と雇用・労働への影響等」について、これまでの議論、今後の変化の予測 や課題について整理した。 また、このようなAI 等の技術革新の雇用・労働への影響を踏まえた上で、働 き方を取り巻く環境の変化に対応するためには、AI 等の新技術を活用しつつ、経済成長に向けて生産性の向上を図ることが求められる。その際には、「人生100 年時代」における職業人生の長期化や、人々が「マルチステージ」の人生を送る ようになるといった見通しも考慮する必要がある。そのため、生産性の向上に加 えて、労働者一人ひとりのキャリアの充実を支援し、誰もが働きやすい転職が不 利にならない柔軟な労働市場を形成することが必要である。このことから、第二 に、こうした「働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組」について、現状と今後の課題について整理した。 さらに、生産年齢人口が減少していく中で日本が今後も成長し続けるために は、テレワークや副業・兼業といった柔軟な働き方をしやすい環境を整備してい くことが必要である。また、女性や高齢者の労働参加の拡大、技術革新など様々な要因を背景に、旧来の労働法制で定義されている「労働者」の枠組みに当ては まらない働き方が今後、更に拡大することが見込まれる。そこで、第三に、こうした「時間・空間・企業に縛られない働き方」について、具体的な措置が求めら れる課題や引き続き検討が必要な論点を整理した。
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