厚生労働省は、「医師の働き方改革に関する検討会 とりまとめ骨子 」を発表しました。
医療関係者は必見です。
1.医師の働き方改革に当たっての基本的な考え方
(1)医師の働き方改革を進める基本認識
○ 医師の働き方改革に関する検討会においては、本年2月に「中間的な論点整理」 「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」をとりまとめたのち、さらに8回 の議論を重ねてきた。具体的には、医師の勤務実態のさらなる分析を進めつつ、 テーマを大別して ・ 働き方改革の議論を契機とした、今後目指していく医療提供の姿 ・ 働き方改革に当たって考慮を要する、医療の特性・医師の特殊性 ・ 医師の働き方に関する制度上の論点 について、医師の労働時間短縮・健康確保と必要な医療の確保の両立という観点 から議論を行ってきた。今年度末の検討期限に向けてさらに着実に議論を進めて いくために、これら議論の状況を中間的にとりまとめることとした。
○ まず、長時間労働の医師の自己犠牲により支えられている我が国の医療は、危機 的な状況にあるという現状認識を共有することが必要である。 医師は、昼夜問わず、患者の対応を求められうる仕事であり、他職種と比較して も抜きん出た長時間労働の実態にある。特に、20 代、30 代の若い医師の長時間 労働の傾向がみられる。また、自殺や死を毎週又は毎日考える医師が 3.6%いる との調査もある。さらに、日進月歩の医療技術、より質の高い医療に対するニーズの高まり、患者へのきめ細かな対応が求められる傾向等により、こうした長時 間労働に拍車がかかってきた。これらは個々の医療現場における「患者のため に」「日本の医療水準の向上のために」が積み重なったものではあるが、日本のよい医療を将来にわたって持続させるためには、こうした医師の長時間労働の状 況を変えていかなくてはならない。
○ もとより国民の受ける医療の確保は重要であるが、医師は、医師である前に、一 人の人間であり、長時間労働による健康への影響が懸念される現状を変えて、過 労死等をなくし、健康で充実して働き続けることのできる社会を目指していくべ きである。
○ 他方で、医師の長時間労働の背景には、医療機関における業務や組織のマネジメントの課題、医師の需給や偏在、養成の問題、地域医療提供体制の機能分化・連 携が不十分な地域の存在、医療介護連携や国民の医療のかかり方などの課題が絡
み合って存在する。一人ひとりの医師の健康確保のために長時間労働を是正して いくことと、医師の健康確保により医療の質や安全が確保された医療提供体制を 維持していくことは表裏一体であり、ともに進めていく必要がある。そのために は、全ての人が医療を受ける可能性があることにかんがみても、国民全体で考え、社会全体で医療提供体制の改革、たばこ対策や生活習慣病予防の推進、がん 検診の受診率向上などの予防医療の推進、医師の働き方改革を全体・一体として 並行して進め、国民の医療のかかり方への理解とあいまって、必要な時に適切な 医療を受けられるようにしていく必要がある。
○ さらに、育児等を行いながら就業を継続したり、復職したりできる環境が不十分 だと考えられる中で、女性医師の割合が上昇していることなどを踏まえれば、医 師についても多様で柔軟な働き方を実現していかなければ、性別を問わず、医師 として働き続けたいと希望する多様な人材の確保が困難となる。また、仕事と生 活の調和(ワーク・ライフ・バランス)への関心が高まる中、医療現場を支えて いる医師の使命感に応えつつ、魅力的な働き方の実現を目指す必要がある。
○ また、医療は医師だけでなく多様な職種の連携によりチームで提供されるもので あるが、患者へのきめ細かなケアによる医療の質の向上や医療従事者の負担軽減 による効率的な医療提供を進めることが重要である。さらにチーム医療の考え方 を進める必要がある。この点については、看護師等が医師がいないことで患者の 命を救うことを躊躇することがないようにしてはどうか、こうした場合でも患者 側の理解・協力を得られるのではないか、といった声もあり、安全性・有効性を 確認しつつ医師以外の医療従事者や患者の思いも含めた検討も重要である。
○ 「中間的な論点整理」、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」をとりまと めてから1年近く経過する中、過重労働の中で患者と向き合っている現場の医師 の「医療現場の働き方は変わっておらず、本当に医師の働き方は変わっていくの か」という声もあるが、こうした現場の医師の期待を裏切ってはならない。医療 機関と医療従事者が話し合い(勤務環境の改善に向けた労使間の取組など)の中 で取り組むことはもとより、行政、国民それぞれの立場から、また、医療分野と 労働分野の双方から、国民が受ける医療と医師の両方を社会全体で守っていくという強い決意の下に、医師の働き方改革に取り組んでいかなければならない。
○ そのために、必要かつ実効的な支援策を十分に講じながら、まずは 2024 年4月からの時間外労働規制の適用までの猶予期間の間に、最大限の改革を行い、そしてその後も絶え間なく取組を進めていかなければならない。
(2)働き方改革において考慮を要する医療の特性・医師の特殊性
○ 医師の働き方の観点からみた医療の特性は、以下の4つが合わさったものとして 考えることができる。
・ 不確実性(疾病の発生や症状の変化が予見不可能であること、治療の個別性、 治療効果の不確実性があること)、
・ 公共性(国民の生命を守るものであり、応召義務も設定され、国民の求める日 常的なアクセス、質(医療安全を含む)、利便性、継続性等を確保する必要が あること、職業倫理が強く働くこと、公的医療保険で運営されていること)
・ 高度の専門性(医師の養成には約 10 年以上の長期を要し、業務独占とされて おり、需給調整に時間がかかる中、医師でなければできない仕事が存在するこ と)、
・ 技術革新と水準向上(常に知識・手技の向上を必要とし、新しい診断・治療法 の追求と、その活用・普及(均てん化)の両方が必要であり、それらは医師個 人の努力に大きく依存してきたこと)
○ こうした特性がある中、勤務環境整備が十分進んでおらず、出産・育児期の女性など時間制約のある医師にとっては就業を継続しにくい働き方となっている。
○ これらを踏まえると、時間外労働の上限時間数の検討においては、以下の点を考 慮する必要がある。
・ 医師についても、一般則が求めている水準と同様の労働時間を達成することを 目指して労働時間の短縮に取り組むこと
・ 一方で医療の公共性を踏まえれば、不確実性を考慮した上で、時間外労働の上 限規制により医療現場において診療が萎縮することがない水準とする必要が あること
・ その場合であっても、医療安全の観点からも、医師が健康状態を維持できるこ とは重要であること。医師の健康確保のために、6時間程度の睡眠を確保でき ること
・ 労働時間の短縮に向けた取組を徹底するため、継続的に労働時間のモニタリン グを行い、一定以上の長時間労働の医師がいる医療機関に対して、重点的な支援を行うこと
・ 労働に該当する研鑽であっても、医師の使命感からくる研鑽の意欲をそがない という点に留意しつつ、医療の質の維持・向上のために必要とするものを行え ること
・ 出産・育児期の女性など時間制約のある医師が働きやすい環境を整える必要が あること
○ また、時間外労働の上限時間数の検討においては、規制の適用時期(2024 年4月) が既定である中、それまでの間においても、 「医師の労働時間短縮のための緊急的 な取組」等を着実・強力に進めなければならず、また、進めた上で適用されるも のであることを関係者が共有しなければならない。さらに、医師偏在の状況、今 後の医師数の増加、地域医療構想の進展、個々の医療機関におけるマネジメント 改革の進展、国民の医療のかかり方など、医療のあり方自体が変わっていくもの であることを踏まえ、「時間軸」を十分に考慮して設定する。
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