東京新聞は、パワハラ対策義務化 ハラスメント規制法成立と発表しました。
職場のハラスメント対策の強化を柱とした女性活躍・ハラスメント規制法は二十九日の参院本会議で自民党と公明党、立憲民主党、国民民主党などの賛成多数により可決、成立した。パワハラやセクハラ、妊娠出産を巡るマタニティーハラスメントに関し「行ってはならない」と明記。パワハラの要件を設け、事業主に相談体制の整備など防止対策を取るよう初めて法律で義務付けた。罰則を伴う禁止規定はなく、実効性を確保できるかどうかが課題だ。
パワハラは厚生労働省の労働局への相談件数が増加し被害が深刻化したことから法規制に踏み切った。労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など五本の法律を一括改正する内容。
三つのハラスメントの対策として国・事業主・労働者に対し、他の労働者の言動に注意を払う責務を規定。事業主には、被害を相談した労働者の解雇など不利益な取り扱いを禁止する。
パワハラは(1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する-の三つを要件とした。防止するための取り組みを事業主に義務化。相談体制の整備など具体的内容や該当する事例などは、今後労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論し指針で定める。
セクハラは対策を強化する。事業主は、自社の労働者が取引先など社外でセクハラをした場合、被害者側の事業主から事実確認などを求められれば協力するよう努力義務を設けた。顧客からのカスタマーハラスメントや就活生へのセクハラは指針で対策を検討する。
女性活躍は、これまで従業員三百一人以上の大企業に限った女性社員の登用や昇進などに関する数値目標の策定義務を従業員百一~三百人の中小企業に拡大する。
パワハラ対策の義務化は大企業では来年四月にも始まる。中小企業は同時期に努力義務でスタートしその後二年以内に義務化される見通し。
◆実効性高める指針必要
<解説> 社会問題となっているパワハラ防止の法制化は初めてだ。セクハラやマタニティーハラスメントと異なり、これまでは企業の自主的な対応に委ねられてきており一歩前進と言える。企業自らが規制強化の背景を重く受け止め、ハラスメント根絶に向けた責務を着実に果たさなければならない。
ハラスメントは人の尊厳を傷つける人権侵害だ。職場の環境が悪化するだけではなく、被害者が休職や退職を余儀なくされ、自殺に追い込まれるケースも後を絶たない。
働き方改革の必要性を社会が痛感した広告大手電通の新入社員が過労自殺した問題でも、原因に長時間労働とともにパワハラが指摘された。長時間労働は罰則付きの規制が導入された。
一方、パワハラは「適正な指導との境界が曖昧だ」との企業側の主張に沿って、罰則を伴う行為自体の禁止規定は見送られた。
被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況はあってはならない。法律の実効性を高めるためにも、厚生労働省は何がパワハラに該当するのかを分かりやすく指針で規定する必要がある。
企業の取り組みはもとより、一人一人が決して許されない行為だと改めて自覚し、行動することも求められている。 (共同・山口晶子)
<ハラスメント規制> セクハラは1999年施行の改正男女雇用機会均等法で事業主の配慮義務を定め、2007年から事業主に防止措置を義務付けた。マタニティーハラスメントは17年から同法と改正育児・介護休業法で事業主の防止措置を義務化。パワハラは今国会で労働施策総合推進法を改正し初めて防止措置義務を規定した。労働局へのパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談は17年度で約7万2000件、相談内容別では6年連続最多。
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等 の一部を改正する法律案の概要は、こちらをご覧ください。
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