厚生労働省は、「第7回 働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」の資料を公開しました。
ポイントは、下記の2点です。
①短時間労働者に対するこれまでの適用拡大の結果及 び影響の検証
○ 義務的な適用拡大の対象者は制度施行後一貫して増加を続けているが、要因として、人手不足等を背景として、労働時間の延長や時給単価の上 昇等により、新たに短時間被保険者としての要件を満たす者が出てきていることが考えられる。
○ 従業員 500 人以下の民間企業を対象とした任意の適用拡大についても、制度施行後、対象事業所数・短時間被保険者数とも増加を続けている。人 手不足が深刻化する中、中小企業の中にも、社会保険料の負担増加よりも人材確保・育成を優先し、任意の適用拡大制度を活用する企業が徐々に 増えてきているものとみられる。
○ 先般の適用拡大によって新たに適用対象に含まれたのは、週労働時間 20~30 時間の雇用者約 450 万人中約 40 万人規模。
○ 適用拡大を通じて被保険者となった短時間被保険者の属性を性別・年齢階級別に見ると 40〜50 歳代の女性に加えて、60 歳以上の高齢者が非常 に多くなっている。近年、女性や高齢者の労働参加が進んでいるが、これまでの適用拡大により、こうした女性や高齢者などの短時間労働者が被用者 保険の体系に取り込まれていることがわかる。
○ 短時間被保険者の適用拡大前の公的年金の加入状況を見ると、国民年金第1号被保険者であった者が約4割と最も多く、そのほか、国民年金第3 号被保険者、適用拡大以前から厚生年金保険の被保険者であった者、被保険者となっていなかった者が、いずれも約2割程度となっており、短時間 被保険者となった者がいわゆる主婦パートだけではなく、多様な属性を持った者で構成されていることが確認できる。 このうち、国民年金第1号被保険者であった者の国民年金保険料の納付状況についてみると、約半数は全額納付となっていた一方で、残りの半数 は免除または未納の状態であった。また、保険料納付状況を就業状況別に見ると、自営業主や家族従業者に比べ、雇用者(常用雇用やパート・アル バイト)は完納者の割合が少なかった。 適用拡大は、国民年金第1号被保険者の中でも未納等のリスクが相対的に高い層の人々を新たに厚生年金の適用対象に加えたことになり、これら の方々の将来の年金権の確保という観点からはかなりの効果をもたらしたと考えることができる。
○ 適用拡大対象者の業種別分布を見ると、従業員に占める短時間労働者の比率の高い、卸売業・小売業、医療・福祉、運輸業、郵便業といった一部 の業種に偏在しており、適用拡大の影響は特定の業種で大きかったとみられる。
② 今後の検討の方向性
○ 雇用形態や企業規模の違いによって社会保険適用の有無が異なることは、働く者にとって不合理。被用者 保険適用によるセーフティネット整備が重要であり、更なる適用拡大を実施すべき。
○ 本来ならば企業規模や業種・業態に関係なく、働く側の人の立場で考えるべき。働く者に相応しい保障を 実現することが肝要ではないか。
○ 適用拡大は将来の貧困対策としても重要。将来の社会問題化を避けるためにも今取り組むべき。
○ 被用者保険の適用対象となれば、年金水準の向上につながる上、健康保険については、傷病手当金や出 産手当金を受け取れるようになる。労働者にとってのこうした利点の観点からも被用者保険の適用拡大は進 めていくべき。
○ 適用拡大は、国民年金保険料の未納を減少させ、被保険者本人の年金水準を引き上げ、働き方にもニュ ートラルな制度にしていくものであり、政策方針として厚生年金被保険者を増やすのは正しい。
○ 適用拡大が、低所得者、社会的困難に直面している層の就労増加につながったことなどを総合的に考える と、慎重に行う必要があるという留保付きではあるが、方向性に賛同。
○ 多様化する働き方に対応するために社会保障制度を見直すことは重要。他方、最低賃金の引上げ、社会 保険料負担増、人手不足、働き方改革への対応、消費税増税分の価格転嫁など、中小事業者の厳しい実 情を総合的に勘案しつつ検討すべきではないか。
○ 適用拡大は、被用者保険の担い手を増やし、被用者保険の安定性が向上するというプラス面がある。一方 で、事業主負担や、業種による負担差、深刻な人手不足という事情を念頭に置きつつ議論する必要。
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