本日は、配偶者居住権活用のメリットの3点目についてご説明致します。
配偶者居住権が最も注目されている理由でもありますが、配偶者居住権は、配偶者の死亡・存続期間満了により消滅するため、2次相続時の相続税の負担が軽減される点です。
それでは、4月9日にご紹介した配偶者居住権の計算事例を使って、遺産分割と遺言の2つのケースをご説明しましょう。
配偶者居住権を活用した遺産分割の場合
被相続人(夫)の相続が発生し、自宅の土地建物(相続税評価額:木造建物1000万円、土地12,000万円)に配偶者(妻 70歳)に終身の配偶者居住権を設定し、長男が所有権を取得したとします。なお、自宅には、配偶者と長男が同居しているとします。
配偶者が配偶者居住権の設定時点の相続する相続財産の価額は、4月9日にご案内の通り、下記の金額となります。
(1)配偶者居住権の価額 172万円
(2)配偶者居住権に対応する敷地の利用権の価額 5,352万円
(3) (1)+(2)= 5,524万円
70歳の妻の平均余命は、20年ですので90歳で妻が亡くなった場合の2次相続時には、上記の配偶者居住権等が消滅しますので、長男は、相続税を支払うことなく、自宅を相続することができるわけです。
すなわち、約5,500万円の配偶者居住権を20年間で償却するため、相続税が掛からないという考えに基づいているからですが、例えば、不慮の交通事故で妻が配偶者居住権を設定した翌年に亡くなった場合は、どうなるのでしょうか。
実は、この場合でも相続税は掛からないというのが、現行相続税の規定です。
配偶者居住権を活用した遺言の場合
次に、夫が存命中に上記の自宅の土地建物に配偶者居住権を設定し、妻に配偶者居住権等を長男に所有権を遺贈する遺言を作成したとします。この場合、妻が70歳の時に夫が亡くなった場合は、どうなるのでしょうか。(相続税評価額は、上記の事例とし、土地の面積は200㎡とします。)
1.配偶者の相続する土地建物の相続税評価額
(1)配偶者居住権の価額 172万円
(2)配偶者居住権に対応する敷地の利用権の価額 5,352万円
(3) (1)+(2)= 5,524万円
2.長男が相続する土地建物の相続税評価額
(1)配偶者居住権が設定された建物の所有権の価額 828万円
(2)配偶者居住権が設定された敷地の所有権の価額 6,648万円
(3) (1)+(2)= 7,476万円
計算式等は、4月9日をご覧頂くとして、上記の通りとなります。
3.特定居住用宅地等の小規模宅地の特例の評価減の価額
相続税法上の特例に、特定居住用宅地等の小規模宅地の特例というものがあり、配偶者居住権が設定された土地についても、一定の条件のもとで、本特例も使える場合があります。
その場合には、土地の相続税評価額が80%の評価減となり、妻と長男が相続する土地の相続税評価額は、下記の通りとなります。
(1)配偶者居住権に対応する敷地の利用権の評価減の価額 5,352万円×80%=4,281万円
(2)配偶者居住権が設定された敷地の所有権の評価減の価格 6,648万円×80%=5,318万円
4.妻と長男の土地建物に関する相続税評価額
(1)妻・・・1(3)-3(1)=1,243万円
(2)長男・・・2(3)-3(2)=1,330万円
実は、1次相続時点では、配偶者居住権の設定の有無は、相続税の金額に影響を与えませんが、先ほどご説明しました通り、妻が亡くなった場合の2次相続時の長男の相続税負担がないことが、配偶者居住権設定の最も大きな効果といっても過言ではありません。
①一定の条件のもとで配偶者居住権は、配偶者の死亡等により、消滅するため2次相続の負担が軽減される。
②特定居住用宅地等の小規模宅地の特例も一定の条件のもとでダブル適用することができる。
配偶者居住権は、遺産分割及び遺言の作成上必ず考慮しなれけばならない事となりました。
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