日本経済団体連合会は、構造的な賃上げによる経済好循環の実現に向けて下記内容を発表しました。
わが国経済は、コロナ禍からの活動正常化に伴い、設備投資意欲が顕在化し、約30年ぶりの高い賃上げが実現されるなど、停滞から成長への転換局面を迎えている。デフレからの完全脱却を図るべく、構造的な賃上げや投資拡大による経済好循環を実現していく主体は、我々民間、経済界である。経済好循環の実現は、全従業員数の約7割を雇用する中小企業が自己変革による付加価値拡大とともに、価格転嫁を通じて持続的な賃上げの原資を確保できるかが鍵となる。
昨年1月、経済3団体で「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上について共同要請を発出し、宣言企業数は倍増し、政府の取組みも強化されてきているが、公正取引委員会や中小企業庁の調査では、未だ十分な価格転嫁が進んでいるとは言い難いのが実情である。
ここに経済3団体として、会員企業、特にサプライチェーン上位に位置する大企業、中堅企業に対して、「パートナーシップ構築宣言」の趣旨の徹底と実行を強力に進めるとともに、未宣言企業に対して宣言への参画を呼びかける。
1.経営者自らが先頭に立った、取引適正化への取組み強化
- 経営者自らが先頭に立ち、「パートナーシップ構築宣言」について、積極的に宣言・公表を行うとともに、実行とフォローのための社内体制を明確に示し、取引適正化の徹底を図る。
- 大企業等の発注者は、受注者である中小企業等の要請に真摯に向き合うとともに、中小企業等の受注者は、臆することなく価格交渉を申し入れ、価格転嫁を新たな商習慣としていく。
- 宣言内容について、下請中小企業法に基づく振興基準の改正等を踏まえ、不断に見直すとともに、直接の取引先を通じて、その先の取引先へ働きかけることで宣言の実効性確保と社会全体への浸透を図る。
2.労務費を含む適切な価格転嫁の推進
- 業界の商習慣等により対応が極めて困難な労務費の転嫁を推進するため、昨年11月、内閣官房と公正取引委員会から「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が公表された。発注者及び受注者双方が同指針に示された「12の行動指針」(別添参照)に沿った行為を徹底することで、持続的な賃上げと価格転嫁の商習慣化をサプライチェーン全体で実現させる。
- とりわけ、経営トップが社内外に方針を示すとともに、最低賃金上昇率、春季労使交渉の妥結額・上昇率等公表資料を基に価格交渉・転嫁を行う。
3.サプライチェーン全体の成長に向けた取組み
- サプライチェーン全体で商品・サービスの付加価値向上を図るとともに、適正価格での提供について最終消費者の理解を得られるよう啓発を行う。政府には、メディア等を活用し、「良いものには値が付く」ことへの理解促進を図られたい。
- パートナー企業との連携により、サプライチェーン全体での付加価値向上を図る。人手不足が深刻化する中、デジタル化による生産性向上や省力化など、下請中小企業単体では対応が難しい課題解決にも積極的に挑戦する。
- 自社の属する業種・業界・サプライチェーンにおける課題を適切に把握するとともに、業界内で依るべき優良な取引慣行について体系的な改善サイクルの確立を図る。
以上
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