暦年贈与制度が相続時精算課税制度に一本化される?

本日は、令和3年度税制改正大綱の中で、私が最も注目した「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」の下記抜粋の内容について、ご説明致します。(下線部等は筆者が追記)

『高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。(A)
わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。(B)
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。(C)』

上記内容を読むと、(A)で世代間の資産の早期移転が課題としているものの、(B)で格差問題が世界的に問題視されるなかで富裕層の相続税の回避防止には限界があり、結果として(C)で暦年贈与制度(注1)を廃止して、相続時精算課税(注2)に1本化することを本格的に検討するという内容です。
(注1) 暦年贈与とは、贈与税の暦年課税制度の贈与のことで1月1日から12月31日までの間(暦年)に贈与を受けた金額が110万円(基礎控除額)以下なら贈与税の申告が不要な制度。なお、相続時に相続財産を取得する相続人は、相続開始前3年以内の贈与は、相続財産として課税されることに留意を要する。
(注2)相続時精算課税とは、生前贈与をするときは2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税する制度。

<本日のまとめ>
1.富裕層は、暦年贈与制度を活用して時間をかけて贈与することで、相続税を節税してきたが、格差問題が注目される中で、令和3年税制改正大綱で暦年贈与制度を廃止して、資産の移転のタイミングで税額が中立的な相続時精算課税制度に1本化することを検討することを発表した。
2.上記税制改正が正式に決定されれば、富裕層の相続税節税の王道であった暦年贈与制度が活用できなくなる。

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