配偶者居住権の設定方法と留意点

本日は、配偶者居住権の設定方法についてご説明しましょう。
配偶者居住権の設定方法には、遺産分割協議、遺贈、死因贈与、審判による配偶者居住権の取得の4つがあります。
本日は、そのうち遺産分割協議と遺贈による配偶者居住権の取得についてご案内致します。

1.遺産分割協議による取得の方法

遺産分割協議にあたり、まず検討すべきことは、下記の点です。
①配偶者居住権の設定期間は、終身にするのか設定期間を設けるのか。
②配偶者居住権を設定した建物・土地の所有者を誰にするのか。
➡配偶者が亡くなった場合に、だれが相続するのかが決定しますので、遺産分割協議の際には、よく検討する必要があります。この事は、2次相続発生時に争族争いを防ぐ効果もあります。
①については、配偶者のライフプランとして、将来的に老人ホームに入る予定がある若しくは自宅の売却の予定がある等を考慮して検討します。
②については、通常同居の推定相続人である子供が入れば、将来的にも同居する子供にすることが、相続税を考える上で最も重要になります。既に配偶者居住権活用のメリットでご説明致しましたが、同居の推定相続人が所有者となれば、配偶者居住権活用のメリットを最大に活用できるからです。
同居の親族がいない場合は、どうしたらよいでしょうか。その場合でも、推定相続人の子供にすることで、2次相続に配偶者居住権が消滅しますので、一定のメリットを享受することができます。
次に遺産分割協議書の書き方について、ご案内しましょう。
(遺産分割協議書の一例)
1.下記の遺産について、A(長男)はその所有権を取得し、B(妻)は、配偶者居住権を取得する。
(1)土地
所在 東京都〇〇~
地番 〇〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇㎡
(2)家屋
所在    東京都〇〇~
家屋番号 〇〇番〇
種類   居宅
構造   木造瓦葺2階建て
床面積  1階部分 〇〇.〇〇㎡ 
     2階部分 〇〇.〇〇㎡

2.遺贈による取得の方法

遺言書を作る前に検討すべきことは、基本的には、遺産分割協議書を作る際に検討すべきことと同じですが、なぜそのような遺言を作ったか、遺言書の最後の付言事項に記載しておくと、相続人の争族争いを防ぐ効果もありますので活用して頂ければと思います。また、配偶者居住権は、遺贈の目的とされた場合に成立することから、いわゆる「相続させる」旨の遺言よっては発生しないことに注意が必要です。
(遺言書の一例)
遺言者は、遺言者の下記の不動産を遺言者の長男Aに相続させ、当該不動産の配偶者居住権を妻Bに取得させる
(1)土地
所在 東京都〇〇~
地番 〇〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇㎡
(2)家屋
所在    東京都〇〇~
家屋番号 〇〇番〇
種類   居宅
構造   木造瓦葺2階建て
床面積  1階部分 〇〇.〇〇㎡ 
     2階部分 〇〇.〇〇㎡

3.配偶者居住権設定上の留意点

(1)配偶者居住権を活用した遺産分割は、2020年4月1日以降に発生した相続に限られます。
従って2020年3月31日より前に発生した相続で2020年4月1日に遺産分割する場合、配偶者居住権を活用できませんので、注意が必要です。
(2)2020年3月31日以前に作成した遺言書で、配偶者居住権を取得する旨の遺言は、有効ではありません。2020年4月1日以降に書き直せば有効になります。遺言の作成日が重要です。
(3)配偶者居住権は、登記しないと第三者対抗要件を具備しませんので、設定した場合には必ず登記するようにしましょう。

【本日のまとめ】
配偶者居住権を設定する際には、配偶者のライフプランをよく検討すると共に、2次相続を含めた遺産分割のあり方や相続税のシュミレーションを行ったうえで、慎重に検討する必要があります。また、遺言を作成する場合には、「相続させる」遺言は作らないようにしましょう。
なお、2020年4月1日以降の相続発生や遺言書の作成によりはじめて配偶者居住権の活用が可能となりますのでご注意下さい。

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