「ストレスチェック制度実施の流れと導入のポイント」

「ストレスチェック制度実施の流れと導入のポイント」

平成 27 年 12 月1日から、労働者数 50 人以上の事業場を対象として、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。実施結果は所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。
厚生労働省は、平成29年7月にはじめて、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の実施状況についてはじめて取りまとめ公表しました。この報告を取りまとめた結果、平成29年6月末時点で、8割を超える事業場がストレスチェック制度を実施済みであることが分かりましたが、一方で約2割の事業所で実施されていないことがわかりました。
そこで、今後労働者数 50 人以上となリストレスチェックの対象となる事業場や未実施の事業所を対象とするストレスチェック導入のポイントをご案内致します。

  1. ストレスチェック導入の目的
  2. ストレスチェック制度実施の流れと導入のポイント
  3. 平成29年7月時点の実施状況
  4. ストレスチェック制度の罰則規定
  5. まとめ

1.ストレスチェック導入の目的

ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法の一部改正に伴って新たに創設された制度で「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)」「労働者自身のストレスへの気づきを促す」「ストレスの原因となる職場環境の改善を促す」という3つの目的を達成するために、調査票によるストレスチェックを実施した上で、必要に応じて医師・専門家による面接指導が行われます。労働者数が50人以上の会社に対して年1回の実施が厚生労働省によって義務付けらている一方、労働者数が50人未満の会社に対しては「努力義務」となっています。

2.ストレスチェック制度実施の流れと導入のポイント

(1)ストレスチェック制度実施の流れ(厚生労働省資料)

ストレスチェックと面接指導の実施に係る流れ

(2)ストレスチェック制度導入のポイント
①実施前のポイント

・事業者は、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明した上で、衛生委員会等 において、ストレスチェック制度の実施方法や実施状況及びそれを踏まえた実施方法 の改善等について調査審議を行わせることが必要である。
・事業者は、当該調査審議の結果を踏まえ、法令に則った上で、当該事業場における ストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、これをあらかじめ労働者に対して周知するものとする。
・ストレスチェック制度は事業者の責任において実施するものであり、事業者は、実施に当たって、実施計画の策定、当該事業場の実施者又は委託先の外部機関との連絡調整及び実施計画に基づく実施の管理等の実務を担当する者を指名する等、実施体制を整備することが望ましい。
・当該実務担当者には、衛生管理者又は事業場内メンタルヘルス推進担当者を指名することが望ましいが、ストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないため、労働者の解雇等に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者を指名することもできる。

②実施のポイント

・事業者がストレスチェックを行うべき「常時使用する労働者」とは、次の(a)及び(b)の いずれの要件をも満たす者であること。 (a)期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者並びに契 約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用 されている者を含む。)であること。 (b)週労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間 の所定労働時間数の4分の3以上であること。
・ストレスチェックは、調査票を用いて、規則 第52条の9第1項第1号から第3号までに規定する3つの領域に関する項目により 検査を行い、労働者のストレスの程度を点数化して評価するとともに、その評価結果を踏まえて高ストレス者を選定し、医師による面接指導の要否を確認するものをいう。
・ストレスチェックを受けた労働者に通知すべきストレスチェック結果は次の(a)から (c)までを含むものでなければならないこと。なお、(a)には、第52条の9第1項第1 号から第3号までに規定する3つの項目ごとの点数を含まなければならないこと。(a)個人ごとのストレスの特徴や傾向を数値、図表等で示したもの (b)個人ごとのストレスの程度を示したものであって、高ストレスに該当するかどうかを示した結果 (c)面接指導の要否
・「遅滞なく」とは、ストレスチェック結果が出力された後、速やかにという趣旨であること。
・ ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者のうち、面接指導の申出を行わない労働者に対しては、実施者が、申出の勧奨を行うことが望ましい。
・事業者は、ストレスチェック結果の通知を受けた労働者に対して、相談の窓口を広げ、相談しやすい環境を作ることで、高ストレスの状態で放置されないようにする等適切な対応を行う観点から、日常的な活動の中で当該事業場の産業医等が相談 対応を行うほか、産業医等と連携しつつ、保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が相談対応を行う体制を整備することが望ましい。
・労働者の同意が得られていない場合には、規則第52条の11の規定に基づき、事業者は、実施者によるストレスチェック結果の記録の作成及び当該実施者を含む実施事務従事者による当該記録の保存が適切に行われるよう、記録の保存場所の指定、保存期間の設定及びセキュリティの確保等必要な措置を講じなければならない。 この場合において、ストレスチェック結果の記録の保存については、実施者がこれを行うことが望ましく、実施者が行うことが困難な場合には、事業者は、実施者以外 の実施事務従事者の中から記録の保存事務の担当者を指名するものとする。
・実施者又は実施者以外の実施事務従事者が記録の保存を行うに当たっては、5年間保存することが望ましい。

③実施後のポイント

・検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であって、同項に規定する面接指導を受ける必要があると当該検査を行った医師等が認めたものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
・意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行われる必要があるが、遅くとも面接指導を実施してから概ね1月以内に行うこと。なお、労働者の心理的な負担の程度等の健康状態から緊急に就業上の措置を講ずべき必要がある場合には、可能な限り速やかに行われる必要があること。
・医師の意見聴取については、面接指導を実施した医師から意見を聴取することが適当であること。
・面接指導を実施した医師が、当該面接指導を受けた労働者の所属する事業場の産業医等でない場合には、当該事業場の産業医等からも面接指導を実施した医師の意見を踏まえた意見を聴取することが望ましいこと。
・事業者が労働者に対して面接指導の結果に基づく就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努めるとともに、労働者に対 する不利益な取扱いにつながらないように留意しなければならないものとする。なお、労働者の意見を聴くに当たっては、必要に応じて、当該事業場の産業医等の同席の下に行うことが適当である。
・事業者は、就業上の措置を実施し、又は当該措置の変更若しくは解除をしようとするに当たっては、当該事業場の健康管理部門及び人事労務管理部門の連携にも十分留意する必要がある。また、事業者は、プライバシーに配慮しつつ、管理監督者に対し、就業上の措置の目的及び内容等について理解が得られるよう必要な説明を行うことが適当である。
・事業者は、検査を行った場合は、当該検査を行った医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
・事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団 の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な 措置を講ずるよう努めなければならない。
④禁止されるべき不利益な取扱い
・次に掲げる事業者による不利益な取扱いについては、一般的に合理的なものとはいえないため、事業者はこれらを行ってはならないものとする。なお、不利益な取扱いの理由がそれぞれに掲げる理由以外のものであったとしても、実質的にこれら に該当するとみなされる場合には、当該不利益な取扱いについても、行ってはならないものとする。
ア 労働者が受検しないこと等を理由とした不利益な取扱い
(a)ストレスチェックを受けない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。例えば、就業規則においてストレスチェックの受検を義務付け、受検しない労働者に対して懲戒処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨に照らして行ってはならないこと。
(b)ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意しない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。
(c)面接指導の要件を満たしているにもかかわらず、面接指導の申出を行わない 労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。
イ 面接指導結果を理由とした不利益な取扱い
(a)措置の実施に当たり、医師による面接指導を行うこと又は面接指導結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴取すること等の法令上求められる手順 に従わず、不利益な取扱いを行うこと。
(b)面接指導結果に基づく措置の実施に当たり、医師の意見とはその内容・程度が著しく異なる等医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の法令上求められる要件を満 たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。
(c)面接指導の結果を理由として、次に掲げる措置を行うこと。
・解雇すること。
・期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。
・退職勧奨を行うこと。
・不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること。
・その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

3.平成29年6月末時点のストレスチェック制度の実施状況(厚生労働省とりまとめ)

(概要)
(1)ストレスチェック制度の実施義務対象事業場のうち、82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施。
(2)ストレスチェック実施事業場の労働者のうち、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%。
(3)ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者の割合は0.6%。
(4)ストレスチェックを実施した事業場のうち、78.3%の事業場が集団分析を実施。
上記の結果、17.1%の実施義務対象事業所が未実施であることが分かります。
詳細は、こちらをご覧ください。

4.ストレスチェック制度の罰則規定

ストレスチェック制度は、50人以上の事業所の場合について、実は法令により義務としておきながら、実施に関する罰則の規定はないのが現状です。
但し、事業者はストレスチェックを実施した後は、所定の様式で労働基準監督署へ報告する義務があります。
報告義務については労働安全衛生法第100条(※1)により次の通り定められており、事業者は労働監督署に報告書を提出しなければならないのです。この報告の義務に関し、同法120条の5(※2)において罰則が定められています。
※1 第100条(報告等)
労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
※2120条の5(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかった者

5.まとめ

(1)厚生労働省では、制度導入を促進すべく、分かり易い説明資料「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について」「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供し、対象事業者をサポートしている。
(2)ストレスチェック制度は、項番3の通り、労働者保護に関する詳細な規定が多く、事業者が「ストレスチェック導入マニュアル」を読み込み自社単独で実施するには、人やコスト及び時間的な制約もあり大変である。
(3)特に、自社で実施するのは、医師による面接指導等の問題もあり、制度導入を躊躇する事業所も多いのも事実である。その場合には、専門家に相談するのも、一つの解決法と言えるでしょう。
★ストレスチェック制度導入については、どもよりも相談しやすい社会保険労務士事務所「KKパートナーズ」にご相談ください。

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