特許出願技術動向調査を取りまとめました(特許庁)

特許庁は、特許出願技術動向調査を取りまとめましたとして、下記内容を発表しました。

特許庁は、令和3年4月30日に、将来の市場創出・拡大が見込める最先端分野である「機械翻訳」、「スマート農業」、「MaaS~自動運転関連技術からの分析~」及び「プラスチック資源循環」などの7の技術テーマについて、特許情報等を調査・分析した報告書を取りまとめました。

1.調査結果の概要

令和2年度は、以下の7の技術テーマを対象とした特許出願技術動向調査を実施しました。

これらのうち、「機械翻訳」、「スマート農業」、「MaaS~自動運転関連技術からの分析~」及び「プラスチック資源循環」について、以下紹介します。

機械翻訳についての紹介

訪日外国人や日本で働いて生活している在留外国人の増加、日本企業の海外進出により、海外との連携が増加する中で、オンライン会議でのやりとりも増えてきており、近年、言語間の翻訳の必要性・重要性がこれまで以上に高まっています。言語間の翻訳に必要となる新たな言語知識の習得には時間と費用を要するので、計算機を用いた精度の高い機械翻訳が期待されています。2014年には、ニューラルネットワーク技術を活用した、ニューラル機械翻訳と呼ばれる方式が登場し、その後、性能が格段に向上しています。

機械翻訳技術全体の出願件数は2016年以降急激に増加しています。特に、中国籍出願人による中国国内への出願の増加が目立ってきております。機械翻訳の中でもニューラル機械翻訳については、日本国籍の技術蓄積が少ない中で、中国籍出願人・米国籍出願人との競争が増している技術との分析結果が出ています。

出願先としては、いずれの国籍(地域)の出願人も、自国(地域)以外への出願先として、米国を選択していることがわかります。そのことから、米国は、機械翻訳分野において国際競争の主戦場になっていると考えられます。

また、米国籍出願人は、いずれの国籍(地域)へも積極的に出願しており、機械翻訳技術の牽引者になっていると考えられます。

機械翻訳技術について、米国籍出願人による出願と日本国籍出願人による出願とが、どのような技術分野を翻訳対象としているのかを、特許出願に含まれる文言によって分析したところ、米国籍出願人は、情報通信業やWebを対象としている出願が多く、インターネット上の文書等のビッグデータを収集し学習して性能を向上させてきたグローバルプラットフォーマー(例えば、IBM、グーグル、マイクロソフト等)がこの技術を牽引してきたと考えられます。

他方、今後は、様々な分野において、各対象分野特有の用語や文脈に応じた翻訳が必要と考えられることや、ローカルな現場におけるきめ細かい顧客対応等のコミュニケーションに対応していく必要があると考えられます。「運輸・流通業」「顧客対応」「生活情報」等、機械翻訳市場におけるニーズが高く、かつ、きめ細かいローカルな対応、分野特有の対応が求められる分野は、これまで日本企業の注力により蓄積がある分野であり、引き続き注力していくべきと考えられます。

  • (参考図)出願人国籍・地域別ファミリー件数比率及び推移(出願先:日米欧中韓、優先権主張2009-2018年)
  • (参考図)出願先国・地域別-出願人国籍・地域別出願件数(出願先:日米欧中韓PCT)

(参考図) 「翻訳対象」に関する技術区分-「米国籍の付与率」×「日本国籍の付与率」(日米欧中韓PCTへの出願、優先権主張2009-2018年)

※ ここで、技術区分Aに関する米国籍の付与率とは、米国籍の全体のファミリー件数の中で技術区分Aが付与されているものの割合を意味する。
※ 「農林水産業」「鉱業・建設業」「製品説明」「電気・ガス・水道業」「法務」は国内外全体のファミリー件数が少ないためプロットから除外した。

スマート農業についての紹介

スマート農業とは、実際の農場や施設における、植付、生育管理、収穫等の農作業から収集されたデータを、AI等の最新の技術を駆使して解析することで、管理を最適化し、より生産性の高い、付加価値の高い農業生産を目指す技術です。

調査の結果、中国籍出願人の近年の特許出願件数の伸びは顕著ではありますが、そのほぼ全てが自国への出願です(99%)。日本国籍出願人による特許出願件数も増加傾向にあります(自国への出願割合は68%)。また、特定の分野を抽出し、各国籍出願人の出願内容がより概念的な内容を含むか、具体的な内容を含むかについて比較した結果、例えば日本国籍出願人による出願内容は、車両用ロボットやそれらからのデータ取得において、より具体的な内容を含んでいることなどが示唆されました。

また、スマート農業の技術を含む注目出願人による出願内容の内訳を分析したところ、日本国籍の注目出願人による出願内容には、実際の農業技術を起点とした農機等及びデータ収集技術が多く含まれており、今後は、収集された農業データを分析するにあたり、データ提供側の立場の意思を尊重したデータ主権の設定も含めて検討することが、重要な課題であるとされました。

  • (参考図)出願人国籍・地域別ファミリー件数推移(出願先:日米欧中韓独仏西蘭加以豪印ASEAN、優先権主張2010-2018年)

MaaS~自動運転関連技術からの分析~についての紹介

自動運転の開発が活発化する一方で、ICT(Information and Communication Technology)を活用し、マイカー、シェアリングサービス、公共交通機関等の様々なモビリティサービスを統合したMaaS(Mobility as a Service)が、近年、欧州での取組をはじめとして注目されています。あらゆる交通手段を統合し、その最適化を図ることで、快適なサービスを提供することができるようになります。

本調査においては、自動運転関連技術に関しては広範囲にわたり日本から多くの特許出願がなされていることが確認されましたが、MaaS 関連技術に関しては、中国や米国の存在感が大きく、特に、中国からは公共交通機関であるバス、タクシー、鉄道に関する出願件数が多くなっています。日本の公共交通は、鉄道、バス等の分野ごとに事業が形成されており、MaaS の前提となるカーシェアリングやオンデマンド交通をも含めたマルチモーダル連携構築が課題といわれていますが、マルチモーダル関連の技術区分では、中国の出願件数が最も多くなっています。

自動運転技術をMaaSに活用した配車サービスなどの新しいサービスが既に米国などでも開始されています。MaaS 関連技術と自動運転関連技術との融合領域に位置する技術についての各国の動向にも注視していく必要があります。

  • (参考図)バス、タクシー、鉄道における出願人国籍・地域別出願件数比率
  • (参考図)マルチモーダル関連技術に関する出願人国籍・地域別出願件数比率

プラスチック資源循環についての紹介

本調査では、プラスチック資源循環に関連する技術として、(1)生分解性プラスチック(微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるプラスチック)とバイオマスプラスチック(植物等の再生可能な有機資源を原料として製造したプラスチック)からなるバイオプラスチック、(2)紙素材や天然素材を原料とするプラスチック代替素材、(3)廃プラスチックのリサイクル技術、及び、(4)廃プラスチックリサイクルにより得られる再生プラスチック、を主な調査対象として調査を行いました。

プラスチック資源循環の特許出願件数(ファミリー件数)は、中国籍出願人による自国への出願を中心として、全体として近年増加しています。

バイオプラスチックを対象とする調査において、日本国籍出願人は「成形体」の「成形技術」に関する出願が他の国籍出願人と比較して多い傾向にあります。また、バイオプラスチックや再生プラスチックを対象とする調査において、米国、欧州、中国、韓国の各国籍出願人は、材料・製品特性改良全体の出願数に対して「分解性」、「強度・剛性・弾性率」、「耐熱性・熱安定性」に関する出願数の比が大きいのに対し、日本国籍出願人は「耐熱性・熱安定性」、「強度・剛性・弾性率」、「着色や外観」に関する出願数の比が大きい傾向があり、特に、日本は「着色や外観」が強みであると考えられます。

日本は、強みである成形技術や加工技術、着色・外観等の特性改良技術、包装技術を生かし、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの素材について、用途に適した高機能化(成形性、加工性、着色・外観等)を迅速に進め、市場に投入することが望まれます。

  • (参考図)要素技術(プラスチックの製造技術)-出願人国籍・地域別ファミリー件数
  • (参考図)課題-出願人国籍・地域別ファミリー件数

2.特許出願技術動向調査とは

「特許出願技術動向調査」は、世界中の特許情報を、論文情報等と併せて分析して各国や各企業の研究開発動向を把握し、企業・大学・研究機関等が開発戦略・知財戦略を策定するために実施しています。調査においては、有識者からなる委員会で助言等を踏まえ、日本の技術的な強み等を分析し、日本の企業・大学・研究機関等が目指すべき研究開発の方向性を示しています。

  • (参考図)調査のイメージ

関連資料

関連リンク

担当

特許庁総務部企画調査課長 小松
担当者:宮崎、堂畑、佐野

電話:03-3581-1101(内線 2155)
03-3592-2910(直通)
03-3580-5741(FAX)

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