経済産業省・中小企業庁は、支援機関とともに「商工会編②」 ~補助金活用の相談から、じり貧だった事業の立て直しへ~と題して、下記内容を発表しました。
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。
今回の「支援機関とともに」では、2期連続の売上減少・3期連続の営業損失と苦しい経営が続いていた小売店が補助金活用の相談をきっかけに、商工会から経営計画の策定、新規事業のスタートアップのサポートを受け、事業を立て直していった事例を紹介します。
認定支援機関 | えんがる商工会(北海道紋別郡遠軽町丸瀬布中町115) |
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支援企業 | 株式会社イチマル |
企業概要 | 文房具・医薬品・介護用品販売、事務機器リース、写真関連事業 |
所在地 | 北海道紋別郡遠軽町丸瀬布中町14 |
持続化補助金で、写真部門を強化
株式会社イチマルは、北海道のオホーツク地方、紋別郡遠軽町丸瀬布(まるせっぷ)で文房具・薬品・介護用品などを販売している。創業は大正13年、100年近くにわたって、地域の人々の暮らしを支えてきた小売店だ。
2005年の三町一村の合併まで、この地域は「丸瀬布町」という町だった。現在、旧丸瀬布町の地域人口は1,200名ほどであり、若者の転出と高齢化が進み、年々人口が減少している状況である。
「いまから20年前に大学の薬学部を卒業して、25歳の時に家業を継ぐために、この町に帰ってきました(谷口社長)」
曽祖父の代から四代続いた、地域の生活に欠かせないこの店を守りたいとの思いが強かったと、谷口寿康社長は振り返る。帰郷してからは、商工会の青年部の一員として、イベントを企画実施するなど、地域活性化にも取り組んできた。
同店では、文房具・薬品等の販売の他に、証明写真の撮影・現像サービスも業務としていた。地域の人たちにとって欠かせないサービスだが、機材(ポラロイド)の老朽化が進み、このままでは近い将来、サービスが継続できなくなる事態となった。そこで、「補助金を活用して新しい証明写真の設備を導入することができないか」と商工会に相談した。
「証設備導入にあたって、持続化補助金の活用を提案しました。申請にあたっては、経営計画書を作成する必要があります。まず、ここからから支援をスタートしました(宇野経営指導員)」
財務分析、SWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析などを行いながら、いっしょに経営計画書を作成していくと、経営の課題がはっきりと見えてきた。
財務面については、2017年時点で2期連続の売上減少、3期連続の営業損失という状態だった。近年、地域の人口減少が急速に進んだことが主な要因である。商圏の人口が減少するなかで、このままでは事業がじり貧になるのは必然だった。
SWOT分析ではお店の強みや弱みなどを整理していったが、社長からは「ウチの店にはこれといった強みはないよ」と言われた。
「100年近くお店が続いているのは、必ず理由があるはずです。社長、社長の父親である前社長、奥様の3人から、お店の歴史をうかがうなかで、少しずつ強みが見えてきました(宇野経営指導員)」
なかでも最大の強みは「丸瀬布の町民から愛されていること」だと宇野氏は語る。そして、その背景には、ボールペン1本から配達し、休日・時間外でもできる限り対応し、お客様の希望にあわせてどんな商品でも取り寄せてきた、お店の長い歴史があった。また、過疎化・高齢化が進むなかで「町民の生活を支えたい」「丸瀬布を暮らしやすい町にしたい」という社長の思いも、町民から愛される理由の一つだと考えた。
もう一つの強みは、社長の「薬剤師」という資格である。近年、ドラックストアの進出や薬品のネット販売等で医薬品の販売競争は激しさを増しているが、この資格を強みとして事業に活用することはできないかということも、計画書づくりのなかで話しあった。
薬剤師の資格を活かして、調剤薬局を開設
2018年、持続化補助金を活用し、新しい証明写真設備を導入した。写真部門の月間売上が1.5倍に、ポラロイドからデジタルプリントになったことで、原価率は6割削減でき、収益力が高まった。
「商工会に相談したことで、事業の先行きに明るさが見えてきた気がしました。また、証明写真の設備がコンパクトなって、店内にスペースができたことで、新しい事業に挑戦したいとの気持ちが湧いてきました(谷口社長)」
ちょうどその頃、地域病院の院長が退職し、個人病院を開院したいという話があった。院長と前社長は以前からつきあいがあり、お互いに「地域の生活を守り、地域の医療を守りたい」という強い思いを持っていたこともあり、店舗の隣地に医院の開設を提案。開院に合わせて、調剤薬局を開設することになった。
「もともと私が薬剤師の資格を取得したのは、地域医療に貢献したいという気持ちがありました。調剤薬局の開設は、願ってもないチャンスだったのです(谷口社長)」
開院までの期間は、わずか10ヶ月。この間に猛スピードで、店舗の改装から、調剤薬局の申請、従業員の雇用などを行わなければならなかった。
「調剤薬局は地域の暮らしに欠かせない施設であり、お店にとっても大きなチャンスです。商工会として、できる限りサポートしていきたいと思いました(宇野経営指導員)」
調剤薬局の開設にあたって、持続化補助金・地域雇用開発助成金・燃料備蓄推進補助金などの様々な補助金の活用を提案。店舗・トイレの改修や非常用発電機の導入に、補助金を活用した。
あわせて、新規事業の経営計画書の作成も支援。計画書なかで、丸瀬布地域唯一の調剤薬局の使命として、「地域医療への貢献と町民への還元」を掲げることとした。
地域医療への貢献と町民への還元のために
2019年4月、調剤薬局がオープン。その事業効果は大きく、1日の平均来店数は約5倍となり、売上も約2倍に増えた。営業利益も黒字となり、従業員3名を雇用することができた。
「商工会の職員の方には、補助金の申請はもちろん、社会保険の手続き、年末調整までサポートしていただきました。いままで商工会とのおつきあいは地域イベント等が中心でしたが、経営面でこれほどサポートしていただけるとは知りませんでした。(谷口社長)」
「谷口社長が最初の一歩を踏み出して、経営計画書を作成したところから、すべてが始まったと思っています。えんがる商工会の担当エリアは過疎化・高齢化が進み、苦境に直面している事業者もたくさんいます。商工会として、『現状を変えるために何かしたい』と悩んでいる経営者の第一歩を支援していきたいです(宇野経営指導員)」
同店はいま、「地域医療への貢献と町民への還元」のために、医院と共同で認知症の講習会を開催するなど、様々な地域貢献活動を行っている。
「たくさんの皆様に支えられて、調剤薬局を開設することができ、当店の経営も大きく改善することができました。しかし今後、このまま町自体が衰退してしまえば、再び事業はじり貧になってしまいます。丸瀬布をみんなが住みたいと思う、魅力的な町にするために、私たちができることを常に考え、行動に移していきたいと思います(谷口社長)」
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