経済産業省・中小企業庁は、食品製造業向けの有効なクレーム対応方法はありますか?として、下記内容を発表しました。
回答
クレームと一言で言っても、様々なタイプがあります。自身の業態に合った対応方法を身に着け、そのクレームを有効活用しお客様との関係を強化していきます。
クレームとは
辞書で「クレーム」で調べると
- 商取引で売買契約条項に違約があった場合、違約した相手に対して損害賠償請求を行うこと。
- 苦情。異議。
と出てきます。
本来は、損害賠償請求を行うことをさしていましたが、現在では苦情を申し立てることを指すようになっています。
クレーム対応
サービス業におけるクレーム対応は、お詫びをして解決法を示して場合によっては補償することで解決しますが、食品製造業においては、クレームの原因を根本的に解決する必要があります。クレームをもとに製造及びサプライチェーンの改善を重ねることで品質が向上し、お客様からの信用を得ることにつながります。
また、原因の解決方法として「食品トレーサビリティ」の導入を検討します。
食品トレーサビリティとは
食品衛生法においては、食品全般の仕入れ元及び出荷・販売先等に係る記録の作成・保存が食品業者の努力義務として規定されています。くわえて、トレーサビリティに関する法律として「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(通称:牛トレサ法)」、「米トレーサビリティ法(米トレサ法)」が制定されています。
また、EUや米国では、食品全般の基礎トレーサビリティが食品事業者に義務付けられています。
食品トレーサビリティとは、食品の移動を把握することです。
各段階における事業者が、食品を取り扱った際の記録を保存しておくことにより、問題が起きた場所から遡り、どこでその問題が生じたかを調べることができます。クレームの事象からサプライチェーンを遡って調べることで、原因の特定が可能となります。原因が分かれば是正措置により改善することができます。そのため、クレームは困ったこと、嫌なことではなく、大切な経営改善のための情報になります。また、消費者からすると問題に対する具体的な回答が得られることから、事業者に対する信用度が増します。
クレームについては、苦情や顧客満足という形でJIS規格でも定めています。
■JIS規格による品質マネジメントにおける顧客満足
JIS規格を参照し、有効かつ効率的に苦情対応及び紛争解決のプロセスを確立することで、顧客満足及び企業評価の維持・向上に活用しましょう。
■JIS Q 10001:組織の顧客満足行動規範の計画、設計、開発、実施、維持及び改善のための指針を定めている。
■JIS Q 10002:組織内部における製品及びサービスに関連する苦情プロセスについての指針を定めている。
■JIS Q 10003:組織内部で解決されなかった苦情に対する効果的かつ効率的な紛争解決プロセスについての指針を定めている。
これらは、ISO(国際標準化機構)から発行されている「ISO10001」「ISO10002」「ISO10003」の改正をうけ、2019年に改正されました。
クレーム対応で大切なこと
クレーム対応をする上で、大切なことは「記録」、「傾聴」、「適切な対応」です。
◇記録
- 5W1H(「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」)が分かるように記録します。
- 感情的になっているお客様に流されずに、定量的な客観的事実に基づいて記載します。
◇ 傾聴(相手の話を良く聞く姿勢)まずは相手の言い分を聞きましょう。
- 何に対して不満を訴えているのか
- 不満に対してどのような対応を望んでいるのか
- 訴えられている不満によって相手にどのような不都合が生じたのか
これらをしっかりと聞き取りしたら次の段階に進みます。
◇ 適切な対応
<相手の言い分が正当な場合>
- 謝罪をします
- 相手の体調への気遣いも必要です。
- 解決方法の提案をしましょう。提案は必ずこちらからするようにします。
過剰な提案をする必要や、不当な要求を受け入れる必要はありません。
<相手の言い分が正当ではない場合>
- 毅然とした態度で臨みましょう
- 大声を出して威嚇してくる場合や恫喝、暴力と受け取れる場合は、躊躇なく警察へ通報することを推奨します。
初期対応するのが、不慣れな従業員の場合も多くあるでしょう。対応者により差が出ては、会社の信用にも関わります。お客様相談窓口の専用電話を設けて受付を一本化します。また、これまでに実際にあったクレームをもとにした「クレーム対応マニュアル」を作成し、あらかじめ準備しておくことで、対応の標準化が可能になります。
出典:農林水産省・経済産業省、公益社団法人食品衛生協会「食と健康」すぐに役立つクレーム対応のすべて
- 回答者
- 中小企業診断士
三海 泰良
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